中本葬祭ブログ

葬儀の時に茶碗を割るのはなぜなの?

こんにちは。 ありがとうで送るお葬式®

家族葬のウィズハウス新宮・ベルホール中本・ザ・スランバーズガーデン・そうそうの郷太地

紀南地方で5式場を運営しております中本葬祭の中本です。

葬儀における出棺の際に、玄関口で茶碗を割る風習が全国各地であります。

近年は、こうした昔ながらの風習も無くなりつつありますが、完全に無くなった訳ではなく

今現在もしばしば行われる時があります。

では、この茶碗を割るという風習についてなぜそんな事をするのだろう?と疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は「葬儀の時に茶碗を割る理由」についてご紹介させて頂きます。

茶碗を割る理由について

まず、茶碗を割るという行為について、宗教的な理由や根拠は全くありません。

この風習は全国各地で行われており、土地土地により様々な説が存在するようですので、あくまで情報の一つとして捉えて頂ければと思います。

まず、故人の愛用されていた茶碗を割ることで、もう帰ってきてもご飯を食べられないのだから、真っ直ぐ向こうに行ってねという思いを表したものという説。

もう一つは茶碗を上から見た丸い円を「縁」と見立て、これを割ることで縁を絶つ決意をし、だから迷わず向こうに行ってねという思いを表したものという説。

など、その土地土地で微妙にこの解釈などは違えど、意思表示や願いとして茶碗を割っているという点に関しては共通しているようですね。

正直な気持ちとして、個人的にはあまり取り上げたくない内容でした。

なぜなら、お茶碗を割るときのガチャン!という音がずっと耳に残るのではという懸念があることと、この意味が取り方一つで「もう帰ってくるな!」というきつい表現に聞こえてしまうのではないかという思いもあるのです。

まして、お盆には故人様は帰ってきますしね。

ですのであくまで私、一個人としては昔ながらの伝統や慣習は重んじるべきではあるものの、その意味や背景をしっかりと知った上で情報提供し、何よりお客様ご自身が後悔することのないようご判断頂けたらと思っております。様々な葬儀にまつわる風習や慣習がある中で、こちらの風習がちょっと辻褄も合わないし本当に残すべき風習なんだろうかという思いがずっと胸の内にあったので、取り扱いたくない内容でした。

そこで、もう一段掘り下げて調べてみたのですが、般若心経の一節でこのお経の中で最も大切で最後に絶対にお唱えしなければならないとされている以下の一節があります。

羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶

(ぎゃてい ぎゃてい はらぎゃてい はらそうぎゃてい ぼじそわか)

こちらを元々のインドのサンスクリット語の音に直すと

ガテー ガテー パーラガテー パーラサンガテー ホーディー スヴァーハー

となり、これをそのまま直訳しますと

行った 行った 向こうに行った きちんと行った 幸あれ

という意味になります。

こうした所からも、昔の人は後の事はさておき、まずは「向こうに行く」という事を重んじたのかも知れません。

全国各地に見るお葬式の風習も「行く事」に対して意識を強く向けているものであることが多いように感じます。

一方通行で行き、その道を戻らないということをすごく大切にしています。

ですので、お茶碗も割ったり火葬場に行った際には道を変えて同じ道を通らないなどの風習も存在するのですね。

言い換えれば「向こうにちゃんと行って下さいね」という願いの強さをお見送りの中で表現したものなのかも知れません。

昔はお金がなかったり物がなかったりで、街の道の脇などで人が亡くなっているなんて事も珍しい話ではなく、であるが故に迷ったり、成仏できないということをすごく気にしていたのではないでしょうか。

こうした背景もあり、まずは「向こうに行く」と言うことを昔の人はとても重んじたと推察出来ますね。

一旦、行けばお盆などで戻ってくるのは構わないけれど、亡くなってしまったならば、とにかく向こうに行かせてあげたいと言う願いや意思を様々な形で表したものが葬儀の慣習の根底にあるように思います。

表題の「お茶碗を割る」という風習には、もう一つ『向こうに行って貰うために、この世の形を無くして、向こうに茶碗を生まれ変わらせる』という意味合いもあるようです。

このように、お葬式にはその地域、土地で様々な風習があります。その土地に住んでいない人からすれば、時としてその風習が奇異なものに映ってしまうものもあるかも知れません。

しかし、それらの風習の根底には「とにかく亡くなった方を無事に向こうの世界に行かせてあげたい」という、その地の先人達の願いや意思が風習という姿形で表されたものという側面もあるという風に見て頂ければ、また違った見方も出来るのではないでしょうか。

如何だったでしょうか。本日は以上です。

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この記事の著者:(株)中本葬祭/専務取締役 中本 吉保