出棺の際に、故人が使っていた茶碗を割る。この地域でも長く行われてきた習慣です。ただし現在では、ほとんど行われていません。ご葬儀の準備を進める中でこの習慣を耳にされ、「用意しておくべきなのだろうか」と迷われる方もいらっしゃいます。この記事では、どのような習慣だったのか、どのような意味が語り伝えられてきたのか、そして今はどうなっているのかを、新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町でご葬儀をお手伝いしてきた中本葬祭がご説明します。
どのような習慣だったのか
| 行う場面 | 出棺のとき |
|---|---|
| 使うもの | 故人が生前使っていた茶碗 |
| 宗教上の位置づけ | 宗派の作法ではなく、地域やご家庭に伝わってきた習慣 |
| 現在 | この地域では、ほとんど行われていない |
宗教上必ず行わなければならない儀式ではありません。菩提寺の作法として定められたものでもなく、地域やご家庭に伝わってきた習慣です。行っていた地域もあれば、もともと行っていなかった地域やご家庭もあります。
「円」と「縁」――由来として伝えられてきた説
この習慣に込められた意味については、いくつもの説があります。ここでは、当社の代表が福岡で修行していた頃に師匠から聞き、以来もっとも納得のいくものとして受け止めてきた説をご紹介します。
茶碗を上から見ると、丸い形をしています。その丸い形を「円」と見立てる。そして出棺の際に茶碗を割ることで、故人との「縁」を切る。「ここで縁を切ったのだから、もう戻ってきてはいけない。そのまま迷わず行ってください」――そうした願いを込めたもの、という説です。
ただし、これはあくまで伝え聞いた説のひとつです。唯一の由来として定まっているわけではありません。地域によって、また語り手によって、異なる説明がなされることもあります。
同じ習慣は、ほかの地域にもありました
この習慣は、当地域だけのものではありません。代表が修行しておりました福岡県宮若市(旧宮田町)でも、長く行われてきたと聞いています。全国の各地に、似た形で伝わってきた習慣です。
いま、この地域ではほとんど行われていません
ご葬儀の形が変わっていく中で、この習慣もほとんど見られなくなりました。その過程で、当社がご家族にお伝えしてきたことがあります。
亡くなったからといって、ご家族との縁が切れるわけではありません。ご葬儀が終わったあとも、お盆や法要でお迎えする機会があります。ご家族の本当のお気持ちは、「一旦は迷わず、良いところへ行ってほしい。けれど、戻ってきたいときにはいつでも戻ってきてほしい」――そういうものではないでしょうか。
そうしたお話をさせていただく中で、ご家族ご自身がどうされるかをお決めになり、今ではこの習慣はほとんど行われなくなりました。
なお、かつてこの習慣を大切にされてきたご家庭を、否定するものではありません。「迷わず行ってほしい」という願いそのものは、どの時代のご家族にも共通する、尊いお気持ちです。今も行っている地域やご家庭があれば、それもまた大切に受け継がれてきた形です。
ご葬儀の際にどうされるか
- ご家族のお気持ちが最優先です。行う・行わないのどちらかが正しいという決まりはありません。ご家族が納得のいく形をお選びください。
- ご準備いただく必要はありません。この地域では今はほとんど行われていないため、あらかじめ茶碗をご用意いただかなくても差し支えありません。
- 行いたいお気持ちがある場合は、お申し出ください。食器を割る行為には危険が伴いますので、事前にご相談いただき、当日は会場のご案内に従っていただきます。
- ほかの形でお気持ちを表すこともできます。故人が大切にされていた品をお供えする、思い出をお話しになるなど、ご家族らしいお見送りの形があります。
地域の習慣は、時代とともに形を変えていきます。「これは必要なのだろうか」「昔はどうしていたのだろう」と迷われることがありましたら、事前相談でお気軽にお尋ねください。お時間のあるうちにご相談いただければ、当日あわてずに、ご家族が納得できる形を一緒に考えることができます。
よくある質問
いまでも茶碗を割る必要がありますか?
いいえ。この地域では今はほとんど行われておらず、必要な作法ではありません。あらかじめご準備いただく必要もありません。
茶碗を割りたいと思っています。お願いできますか?
ご家族のお気持ちが最優先ですので、ご希望がありましたらお申し出ください。ただし食器を割る行為には危険が伴いますため、事前にご相談いただき、当日は会場のご案内に従っていただきます。
「縁を切る」とは、どういう意味ですか?
茶碗の丸い形を「円」と見立て、割ることで「縁」を切るという説を聞いたことがあります。ただし諸説あり、唯一の由来として定まっているわけではありません。
新宮市・那智勝浦町・太地町・紀宝町の葬儀相談
中本葬祭は、新宮市、那智勝浦町、太地町、紀宝町で6つの葬儀会場を運営し、ご家族の状況に合わせた葬儀をご案内しています。お急ぎの場合は、24時間つながるフリーダイヤルへご連絡ください。
この記事の監修
中本 吉保(なかもと よしやす)/専務取締役・厚生労働省認定 1級葬祭ディレクター
平成12年(2000年)に中本葬祭を創業。以来25年以上・7,500件以上のご葬儀に携わり、「どうすれば故人様が喜んでくださるか」を考え続けています。
