「キリスト教のご葬儀に参列することになったが、どのように準備すればよいのか分からない」――そんな不安を抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。日本では仏式のご葬儀が大半を占めるため、キリスト教式のご葬儀に参列する機会は少なく、服装や御花料(香典)の準備、式の流れなど、戸惑うことも少なくありません。
私たち中本葬祭は、新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町を中心に、創業以来、年間300件以上のご葬儀をお手伝いしてまいりました。仏式のご葬儀が多い当地域ですが、時折、キリスト教式のご葬儀をご希望されるご家族や、参列される方からのご相談も承っております。
本記事では、キリスト教式のご葬儀における基本的なマナーと、地域での実例を交えながら、参列される皆様が安心してご故人様をお見送りできるよう、丁寧にご案内いたします。
キリスト教式葬儀の基本知識
キリスト教式のご葬儀は、仏式とは考え方の根本が異なります。まず押さえておきたいのは、キリスト教では死を不幸や悲しむべき出来事とは捉えず、「神のもとに召される祝福のとき」「永遠の命の始まり」と考えている点です。そのため、ご葬儀の雰囲気や進行も仏式とは異なります。
カトリックとプロテスタントの違い
キリスト教には主に「カトリック」と「プロテスタント」という2つの宗派があります。カトリックは伝承と聖書を共に神の啓示として考え、ローマ教皇を頂点とするのに対し、プロテスタントは聖書を絶対的なものとして扱い、ローマ教皇のような頂点を持たないという特徴があります。
この違いは、ご葬儀の進め方や用語にも表れます。カトリックでは司祭を「神父」と呼び、儀式を「ミサ」、歌を「聖歌」と呼ぶ一方、プロテスタントでは司祭を「牧師」と呼び、儀式を「礼拝」、歌を「讃美歌」と呼びます。また、カトリックでは葬儀と告別式を別に行うのが一般的ですが、プロテスタントでは葬儀と告別式を同時に行うことが多いです。
ご葬儀の目的も異なります。カトリックの葬儀では、神に対して故人の罪を告白して神からの許しを請い、永遠の命が得られるように祈りを捧げます。一方、プロテスタントでの葬儀は遺族を慰めるための儀式であり、故人へ対してではなく神へ対して感謝を捧げるための祈りとなります。
参列時の服装と持ち物
キリスト教式のご葬儀における服装は、基本的に仏式と同じで問題ありません。ただし、いくつか注意すべき点があります。
服装の基本
キリスト教式の葬儀であっても、基本的に光沢のない黒の服装で整えます。露出を避けてアクセサリーは結婚指輪、女性はパールの一連ネックレスやイヤリング(ピアス)のみ、長い頭髪は後ろでくくります。男性は黒のスーツに白いシャツ、黒のネクタイが基本です。女性は黒のワンピースやスーツ、黒のストッキングを着用しましょう。
服装は仏式と同じでよいが、数珠は必要ありません。数珠は仏教の法具ですので、キリスト教式のご葬儀では持参しないようご注意ください。カトリックの葬儀では数珠に似た「ロザリオ」という用具を用いますが、信者でなければ必要ありません。
当地域では菩提寺をお持ちのご家庭が多く、仏式のご葬儀が大半ですが、教会に通われているご家族もいらっしゃいます。参列される際は、まず故人様やご遺族の宗派を確認されることをお勧めいたします。
御花料(香典)の準備とマナー
キリスト教式のご葬儀でも、仏式の香典に相当する金銭を包む習慣があります。ただし、呼び方や書き方が異なりますのでご注意ください。
「御花料」という呼び方
キリスト教では「香典」ではなく「御花料」と呼びます。キリスト教にはお香をたく文化はないので、「香典」ではなく「御花料」(カトリック・プロテスタント共通)と表書きします。キリスト教では故人が仏になるとは考えず、神のもとへ召される、あるいは天へ旅立つという受け止め方が基本であり、白い花を供えるしきたりがあるため、その生花の代わりとして包むお金を「御花料」と呼びます。
香典袋(不祝儀袋)の選び方
キリスト教で整える不祝儀袋は、白黒の水引きがないものを選びます。キリスト教のシンボル、十字架や百合の花が描かれた封筒でも良いでしょう。蓮の絵のある香典袋は仏教用ですので、使わないように気をつけましょう。キリスト教専用の不祝儀袋が手に入らない場合は、白色無地の封筒でも構いません。
表書きの書き方
表書きは「献花料」または「御花料」とすれば、カトリックとプロテスタントのどちらでも使えます。表書きの下には差出人をフルネームで書きましょう。全て黒色薄墨で書くのがマナーです。カトリックの場合は「御ミサ料」と書くこともありますが、宗派が分からない場合は「御花料」と書いておけば安心です。
金額の相場
「御花料」の相場は、仏式と変わらず5千円~1万円程度、身内であれば2~5万円程度です。ご関係やご年齢により金額は異なりますので、迷われた場合は周囲の方にご相談されるとよいでしょう。地域やご家庭によっても相場は変わります。
渡し方と注意点
キリスト教のご葬儀は、ほとんどの場合教会で執り行われます。教会には入り口に受付が設置されているので、受付で御花料をお渡しします。受付で記帳を済ませる際に、一緒にお渡しすると良いでしょう。御花料は袱紗に包んで持参し、渡す際は袱紗から取り出して、表書きが受付の方から読める向きでお渡しください。
また、キリスト教では死を不幸なこととは考えないので、お悔やみの言葉は控えます。「ご逝去の報に接し、謹んで哀悼の意を表します。○○様の天での平安をお祈りいたします」といった言葉が適切です。「ご冥福」「成仏」「供養」といった仏教用語は使わないようご注意ください。
献花の作法とその他のマナー
キリスト教式のご葬儀では、仏式の焼香に代わり「献花」が行われます。
献花の手順
献花は焼香と同様、喪主・遺族・親族・参列者の順に行います。白いユリやカーネーションを、祭壇に1人1輪ずつささげるのが一般的です。
具体的な手順は以下の通りです。順番が来たら祭壇に進み出て、ご遺族に一礼をしたのち、花の部分が右側にくるようにして、両手で係の人から花を受け取ります。その後、献花台では茎が祭壇のほうへ向くように花を捧げましょう。一礼して黙祷したら前を向いたまま後ろに数歩下がり、再び遺族に一礼して自分の席へ戻ります。
キリスト教信者でない参列者は、献花の後に軽く会釈をして黙とうをすれば良いですが、十字を切る場合、一般的には縦・横の順番で十字を切ります。「アーメン」は信者でなければ唱える必要はありません。
聖歌・讃美歌への参加
キリスト教式では、聖歌や賛美歌を斉唱します。当日、会葬者には式が開始する前に聖歌や賛美歌の歌詞が印刷された紙が渡されます。聖歌斉唱は聴いているだけでも構いませんので、聖歌や賛美歌がわからない場合は、起立したままで静聴していましょう。可能であれば、配られた歌詞を見ながら一緒に歌うことで、故人様への祈りに参加することができます。
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町でのケース
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町の当地域は、熊野地域として古くから深いつながりを持っています。県境をまたぎますが、生活圏・文化圏は一体であり、葬儀の慣習も共通しています。
当地域では菩提寺をお持ちのご家庭が多く、仏式のご葬儀が圧倒的多数を占めます。しかし、新宮市内には教会もあり、キリスト教を信仰されているご家族も一定数いらっしゃいます。また、ご親戚やご友人のつながりで、他地域のキリスト教式のご葬儀に参列される機会もございます。
私たち中本葬祭では、これまでにキリスト教式のご葬儀のお手伝いもさせていただいた経験があります。教会との連携や、当地域の事情を踏まえたご提案が可能です。また、参列される方からの「どのように準備すればよいか」というご相談も承っております。
当地域は地域のつながりが深い土地柄ですので、キリスト教式のご葬儀であっても、仏式と同様に地区の方々への早めのご連絡が望ましい場合があります。式の形式は異なっても、故人様を地域全体でお見送りする気持ちは変わりません。ご不明な点がございましたら、遠慮なく葬儀社や教会にお尋ねください。
よくある質問
キリスト教の葬儀で数珠は持参すべきですか?
いいえ、数珠は仏教の法具ですので、キリスト教式のご葬儀では持参する必要はありません。カトリックにはロザリオという用具がありますが、信者でない方は持参しなくて問題ございません。
香典袋の表書きは何と書けばよいですか?
「御花料」と書けば、カトリック・プロテスタント共通で使えます。カトリックでは「御ミサ料」、プロテスタントでは「献花料」とも書きますが、宗派が分からない場合は「御花料」が無難です。仏式の「御香典」という言葉は使いません。
献花の際、十字を切る必要はありますか?
キリスト教信者でない場合は、献花の後に軽く会釈をして黙祷するだけで問題ありません。十字を切るかどうかは任意ですが、縦・横の順番で切るのが一般的です。「アーメン」を唱える必要もございません。
香典の金額相場は仏式と同じですか?
はい、基本的には仏式と同じ相場で問題ありません。一般的には5千円~1万円程度、身内であれば2~5万円程度が目安です。故人様とのご関係やご年齢により調整してください。
「ご愁傷様です」という言葉は使えますか?
キリスト教では死を不幸とは捉えないため、「ご愁傷様です」「ご冥福をお祈りします」といった言葉は避けた方がよいでしょう。「○○様の天での平安をお祈りいたします」「安らかな眠りをお祈りします」といった表現が適切です。
まとめ
キリスト教式のご葬儀は、仏式とは考え方や進行が異なりますが、基本的なマナーを押さえておけば安心して参列できます。服装は仏式と同じで問題ありませんが、数珠は不要です。香典は「御花料」と呼び、十字架や百合の花が描かれた不祝儀袋、または白無地の封筒を使用します。献花の作法や聖歌への参加など、初めての経験で戸惑うこともあるかもしれませんが、係の方の指示に従い、故人様への敬意を持って臨めば大丈夫です。
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町の当地域では仏式のご葬儀が多数ですが、キリスト教式のご葬儀に関するご相談も承っております。地域の事情を理解した上で、宗派に応じた適切なご提案をさせていただきます。
大切な方との最後のお別れが、穏やかで心に残るひとときとなりますよう、お祈り申し上げます。
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この記事の監修
中本 吉保(なかもと よしやす)/専務取締役・厚生労働省認定 1級葬祭ディレクター
平成12年(2000年)に中本葬祭を創業。以来25年以上・7,500件以上のご葬儀に携わり、「どうすれば故人様が喜んでくださるか」を考え続けています。
