ご家族が亡くなられたとき、故人やご家族が神道(しんとう)の信仰をお持ちの場合、仏式ではなく神式の葬儀を執り行うことになります。しかし「神道の葬儀はどのような流れで進むのか」「仏式とどう違うのか」と戸惑われる方も少なくありません。新宮市で創業以来、年間300件以上の葬儀をお手伝いしてきた中本葬祭では、神式の葬儀も数多く施行してまいりました。この記事では、神道の葬儀の基本的な流れと作法、仏式との違い、そして新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町で神式の葬儀を執り行う際のポイントをわかりやすく解説いたします。
神道の葬儀とは――仏式との違いを知る
神道の葬儀は「神葬祭(しんそうさい)」と呼ばれ、仏教の葬儀とは考え方や作法が大きく異なります。仏教では故人の成仏を願い、僧侶による読経や戒名の授与が行われますが、神道では故人の御霊(みたま)を家の守り神としてお祀りするという考え方が基本です。
神道では死を「穢れ(けがれ)」と捉えるため、神社の境内では葬儀を執り行いません。代わりに、神職(しんしょく)の方にご自宅や葬儀会館にお越しいただき、そこで神葬祭を執り行います。仏式の「お通夜」にあたる儀式を「通夜祭(つやさい)」、「葬儀・告別式」にあたるものを「葬場祭(そうじょうさい)」と呼びます。
仏式では焼香をしますが、神式では「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」を行います。これは榊(さかき)の枝に紙垂(しで)という白い紙をつけた玉串を、神前に捧げる作法です。また、仏式の「戒名」にあたるものとして、神道では「諡号(しごう)」または「諡名(おくりな)」が故人に贈られます。ご位牌の代わりには「霊璽(れいじ)」または「御霊代(みたましろ)」と呼ばれる白木の札が用いられます。
新宮市を含む紀南地域では菩提寺をお持ちのご家庭が多く、仏式の葬儀が一般的ですが、代々神道を信仰されているご家庭や、特定の宗教を持たず神式を選ばれるご家庭もいらっしゃいます。神職の手配や祭壇の設営など、神式ならではの準備が必要になりますので、葬儀社に早めにご相談されることをお勧めいたします。
神道の葬儀の流れ――通夜祭から葬場祭まで
神道の葬儀は、大きく分けて「通夜祭」「葬場祭」「火葬祭」「帰家祭」という流れで進みます。それぞれの儀式について、順を追ってご説明いたします。
帰幽報告と枕直しの儀
故人が亡くなられると、まず神職または喪主が故人の枕元で「帰幽報告(きゆうほうこく)」を行います。これは故人が亡くなったことを神々に報告する儀式です。続いて「枕直しの儀(まくらなおしのぎ)」として、故人を北枕に安置し、白い布で覆います。この段階で神棚や御神札のある場所には白い紙を貼って封じます。これを「神棚封じ」といい、神道では死の穢れが神棚に及ばないようにするための作法です。
通夜祭
仏式のお通夜にあたるのが「通夜祭(つやさい)」です。遷霊祭(せんれいさい)とも呼ばれることがあります。神職が祝詞(のりと)を奏上し、故人の御霊を霊璽に移す儀式が行われます。この際、会場の明かりをすべて消し、灯明のみの中で儀式を執り行う「遷霊の儀」が厳かに進められます。その後、喪主・ご遺族・参列者が順に玉串奉奠を行います。通夜祭の後には「直会(なおらい)」と呼ばれる会食の場が設けられることもあります。
葬場祭
翌日に執り行われるのが「葬場祭(そうじょうさい)」で、仏式の葬儀・告別式にあたります。神職による祝詞奏上、喪主による挨拶、弔辞・弔電の紹介、そして参列者全員による玉串奉奠が行われます。この玉串奉奠の作法は、右手で玉串の根元を上から持ち、左手で葉先を下から支えて受け取り、神前で一礼した後、時計回りに180度回転させて根元を神前に向けて供える、という流れです。作法に不安がある場合は、神職や葬儀社スタッフが丁寧にご案内いたしますのでご安心ください。
火葬祭と帰家祭
葬場祭が終わると、火葬場へ向かいます。火葬炉の前で神職が祝詞を奏上する「火葬祭(かそうさい)」を執り行い、その後ご火葬となります。ご収骨を終えてご自宅に戻った後、「帰家祭(きかさい)」を行います。これは故人の御霊を自宅にお迎えし、無事に葬儀を終えたことを報告する儀式です。神職が同行されない場合は、喪主やご家族だけで行うこともあります。この後、神棚封じを解く地域もありますが、五十日祭まで続けるご家庭もあります。
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町では、古くから「告別式の日の朝に火葬場に向かい、ご収骨後に告別式を執り行う」風習がある地域ですが、神式の場合も同様の流れで執り行うことが可能です。ご家族のご希望や神職との調整により、柔軟に対応できますので、事前に葬儀社にご相談ください。
神道の葬儀で知っておきたい作法とマナー
神式の葬儀では、仏式とは異なる作法やマナーがいくつかあります。参列される方も、事前に知っておくと安心です。
玉串奉奠の作法
神式の葬儀で最も特徴的なのが玉串奉奠です。前述の通り、玉串を受け取る際は根元を右手、葉先を左手で持ち、神前で一礼してから時計回りに回して根元を神前に向けて台に置きます。その後、二礼二拍手一礼が基本ですが、葬儀の場では拍手は音を立てない「忍び手(しのびて)」で行います。手を打つ直前で止めるか、ごく静かに打つのが作法です。
服装と香典
服装は仏式と同様、喪服(ブラックフォーマル)が基本です。男性は黒のスーツに黒ネクタイ、女性は黒のワンピースやスーツに黒のストッキング、控えめなアクセサリーが一般的です。香典袋の表書きは、仏式の「御香典」ではなく「御玉串料」「御榊料」「御神饌料」などを用います。水引は白黒または双銀の結び切りを選びます。
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町では、ご香典を辞退されるご家庭が増えており、神式の葬儀でも同様の傾向があります。事前に辞退の旨が伝えられている場合は、その意向を尊重しましょう。ただし、お持ちになった場合の対応はご遺族の判断に委ねられますので、柔軟にお考えください。
数珠は使わない
仏式では数珠を持参しますが、神式の葬儀では数珠は用いません。手ぶらで参列するか、白い手袋を着用することもあります。間違えて数珠を持って行かないよう注意しましょう。
忌中と喪中の考え方
神道にも忌中・喪中の概念があります。忌中は五十日祭まで、喪中は一年祭までとされることが一般的です。忌中の間は神社への参拝を控え、お祝い事への出席も遠慮します。忌明けの五十日祭が終わると、神棚封じを解き、通常の生活に戻ります。
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町での神道葬儀
新宮市を含む紀南地域、そして熊野川を挟んで隣接する三重県紀宝町は、いずれも熊野信仰の中心地として古くから神仏習合の文化が根付いてきました。熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社)をはじめとする神社が多く、神道に対する理解も深い土地柄です。
ただし、当地域では菩提寺をお持ちのご家庭が多いため、神式の葬儀は仏式に比べると少数派といえます。それでも代々神道を信仰されているご家庭や、特定の宗教を持たず故人のご希望で神式を選ばれるケースもあり、私たち中本葬祭でもこれまで多くの神葬祭をお手伝いしてまいりました。
神式の葬儀を執り行う際には、地域の神職の方との連携が不可欠です。新宮市内や近隣には神職の方がいらっしゃいますので、葬儀社を通じてご紹介し、日程調整や儀式の内容についてご相談いただくことができます。また、神式用の祭壇や玉串、榊などの準備も葬儀社が手配いたしますので、ご遺族が個別に用意される必要はありません。
火葬場については、新宮市斎場をはじめ地域の施設を利用します。当地域では告別式の日の朝に火葬を行い、ご収骨後に葬場祭を執り行う流れを希望されるご家族もいらっしゃいますが、神式の場合は神職との調整が必要です。全国的な流れ(葬場祭→火葬)で執り行うことも可能ですので、ご家族のご希望を最優先にご提案いたします。
地域のつながりが深い紀南・東紀州地域では、家族葬であっても区長や組長への早めの連絡が望まれます。神式の葬儀であっても、この地域の慣習は変わりませんので、ご配慮いただくと良いでしょう。
よくある質問
神道の葬儀に戒名はありますか?
神道の葬儀では戒名は授与されません。代わりに「諡号(しごう)」や「諡名(おくりな)」と呼ばれる故人の名が贈られます。これは故人の名前に「大人命(うしのみこと)」や「刀自命(とじのみこと)」などの尊称をつけたもので、神職が決定します。
神道の葬儀にお坊さんは呼びませんか?
神道の葬儀では僧侶ではなく、神職(神主さん)に儀式を執り行っていただきます。神職は神社に所属されている方にお願いするのが一般的で、葬儀社を通じてご紹介することも可能です。地域やご関係により手配方法が異なりますので、詳しくは葬儀社にご相談ください。
神道の葬儀費用は仏式と比べて高いですか?
神式の葬儀費用は、基本的には仏式とほぼ同水準です。神職へのお礼(御祭祀料)が仏式の御布施に相当し、地域やご関係により異なりますが、一般的には数万円から十数万円程度とされています。祭壇や式進行の費用も仏式と大きく変わりません。正確な金額は葬儀社にお問い合わせください。
神式の葬儀に数珠は必要ですか?
神式の葬儀では数珠は使用しません。仏教の法具である数珠は神道では用いませんので、参列される際は持参しないようご注意ください。手ぶらで参列されるか、白い手袋を用意されると良いでしょう。
神道の葬儀後の法要はどうなりますか?
神道では仏式の「法要」にあたる儀式を「霊祭(れいさい)」または「式年祭(しきねんさい)」と呼びます。亡くなってから十日ごとに十日祭・二十日祭・三十日祭・四十日祭・五十日祭を行い、五十日祭が忌明けとされます。その後は百日祭、一年祭、三年祭、五年祭、十年祭と続きます。地域やご家庭により省略される祭もありますので、神職とご相談ください。
まとめ
神道の葬儀は、仏式とは異なる独自の作法と流れがありますが、故人を丁寧にお送りし、ご遺族が心を込めて見送るという本質は変わりません。通夜祭、葬場祭、火葬祭、帰家祭という一連の流れを理解し、玉串奉奠などの作法を事前に知っておくことで、落ち着いて儀式に臨むことができます。
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町は熊野信仰ゆかりの地であり、神道への理解も深い地域です。神式の葬儀を執り行う際には、地域の神職や葬儀社と連携しながら、故人とご家族の想いを大切にした葬儀を実現することが可能です。宗派や地域による違いもありますので、わからないことは遠慮なく神職や葬儀社にお尋ねください。
神道の葬儀は決して難しいものではありません。故人の御霊を敬い、家の守り神としてお祀りするという神道の精神を大切にしながら、心を込めてお見送りすることが何よりも大切です。
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この記事の監修
中本 吉保(なかもと よしやす)/専務取締役・厚生労働省認定 1級葬祭ディレクター
平成12年(2000年)に中本葬祭を創業。以来25年以上・7,500件以上のご葬儀に携わり、「どうすれば故人様が喜んでくださるか」を考え続けています。
