「そろそろ終活を考えたい」「家族に負担をかけたくない」――新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町で葬儀に携わるなかで、ご年配の方やご家族から遺言書についてのご相談をいただくことが増えてまいりました。遺言書には法律で定められた種類があり、それぞれに特徴や費用、向き不向きがございます。大切な想いをご家族に確実にお伝えするために、まずは遺言書の基礎知識を正しく知っておくことが重要です。
遺言書の3つの種類と基本的な違い
遺言書には、民法で定められた「普通方式」として、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類がございます。それぞれ作成方法や費用、法的な確実性が大きく異なりますので、ご自身の状況に合った方法を選ぶことが大切です。
自筆証書遺言は、遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自ら手書き(自書)して、押印する形式の遺言書です。平成31年(2019年)1月13日以降に作成された自筆証書遺言は、財産目録については各頁に署名押印をすればパソコン等で作成したものや、通帳コピーの添付でもよいとされています。ご自宅で気軽に作成でき、費用もほとんどかからない一方で、形式不備による無効のリスクや、保管中の紛失・改ざんの心配がございます。
公正証書遺言は、遺言者が2人以上の証人の立会いのもとで遺言の趣旨を公証人に述べ、公証人がこれを筆記し、その内容を読み聞かせ、筆記の正確性を承認した全員が署名押印して作成します。公証役場で作成されるため法的な不備がなく、原本は公証役場で保管されるため、最も信頼性の高い遺言書と言えます。ただし、財産の総額が1億円以下の場合は13,000円の遺言加算が加わるなど、費用がかかる点にご留意ください。
秘密証書遺言は、遺言の内容を記載した書面に署名押印をし、これを封筒に入れて、遺言書に押印した印章と同じ印章で封印をした上、公証人および証人2名の前にその封書を提出する形式です。遺言の内容を秘密にしたまま、存在だけを証明してもらえますが、年間100件とマイナーな遺言で、実務上はほとんど使われていません。
新宮市で年間300件以上の葬儀をお手伝いするなかで、私たち中本葬祭がご遺族と接する際にも、「遺言書があって本当に助かった」というお声をいただくことがある一方、「遺言書があると聞いていたのに見つからない」「形式が整っていなくて使えなかった」といったお話を伺うこともございます。
それぞれの遺言書の特徴とメリット・デメリット
自筆証書遺言の最大のメリットは、費用がかからない、好きなときにいつでも修正できる、遺言書の存在やその内容を秘密にできる点です。ご自宅で思い立ったときに作成でき、周囲に知られることもありません。ただし、内容が簡単な場合はともかく、そうでない場合には、法律的に見て不備な内容になってしまう危険性があり、後に紛争の種を残したり、無効になってしまったりする場合もあります。また、自宅で保管していた場合には、これを紛失し、あるいは、発見した者が自分に不利なことが書いてあると思ったときなどに、破棄したり、隠匿や改ざんをしたりしてしまう危険性も否定できません。
こうした自筆証書遺言のデメリットを解消するため、令和2年(2020年)7月10日から、自筆証書遺言書とその画像データを法務局で保管する「自筆証書遺言書保管制度」がスタートしています。法務局で遺言書の原本と画像データを保管できるため、書き換えや破棄といった行為から遺言書を守れますし、検認の手続きを行う必要がなくなります。法務局が遺言書の原本を保管してくれる遺言書保管制度を利用する場合は、1件3,900円の手数料が必要ですが、公正証書遺言に比べれば格段に費用を抑えられます。
公正証書遺言のメリットは、公証人という法律の専門家が関与するので、複雑な内容であっても、法律的に見てきちんと整理した内容の遺言にしますし、もとより、方式の不備で遺言が無効になるおそれもありません。また、遺言書の原本が必ず公証役場に保管されるので、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりする心配も全くありません。さらに、体力が弱り、あるいは病気等のために、手書きすることが困難となった場合でも、公証人に依頼することによって、遺言をすることができます。一方で、費用がかかることと、証人2名の立会いが必要なため内容が完全には秘密にできない点がデメリットと言えます。
秘密証書遺言は、遺言書が間違いなく遺言者本人のものであることを明確にでき、かつ、遺言の内容を誰にも明らかにせず、秘密にすることができますが、公証人は、その遺言書の内容を確認することができないので、遺言書の内容に法律的な不備があったり、無効となったりする危険性がないとはいえません。また、秘密証書遺言の作成にかかる公証役場手数料は一律11,000円です。実務上、公正証書遺言か自筆証書遺言のいずれかを選ぶのが一般的となっています。
遺言書作成にかかる費用相場と内訳(2026年時点)
自筆証書遺言をご自身で作成する場合、筆記具や用紙代のみで、ほぼ費用はかかりません。ただし、法務局が遺言書の原本を保管してくれる遺言書保管制度を利用する場合は、1件3,900円の手数料が発生します。
公正証書遺言の作成費用は、遺言の目的である財産の価額に対応する形で、その手数料が定められています。例えば、財産の価額が100万円以下なら5,000円、1,000万円以下なら17,000円、5,000万円以下なら29,000円といった具合です。財産の総額が1億円以下の場合は13,000円の遺言加算が加わります(2025年10月の手数料令改定により11,000円から引き上げ)。また、証人2人の証人が必要となるため、専門家に依頼したり公証役場で紹介してもらったりする場合は、1名につき1万円前後の日当が必要とされています。
専門家に遺言書の作成をサポートしてもらう場合、弁護士に依頼する場合の費用の相場は、定型の遺言書であれば10万円~20万円程度、司法書士に依頼する場合、費用の相場は8万円~15万円程度といわれています。遺言書の内容や財産の規模によって費用は変動いたしますので、詳しくは専門家にお尋ねください。
当地域では、新宮市内に公証役場があり、公正証書遺言の作成が可能です。また、法務局での自筆証書遺言保管制度は、新宮市を含む地域を管轄する法務局で利用できます。どちらの方法を選ぶにせよ、正確な費用や手続きの詳細については、それぞれの窓口や専門家にご確認いただくことをお勧めいたします。
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町での遺言書の扱い
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町といった熊野地域では、菩提寺をお持ちのご家庭が多く、先祖代々のお墓や供養を大切にされる文化が根付いております。遺言書を作成される際にも、ご自身のお墓や仏壇の承継、菩提寺への寄付や永代供養料のことなど、供養に関わる事項を盛り込まれる方が少なくありません。
また、当地域は地域コミュニティのつながりが深く、不動産や事業を代々継いでこられたご家庭も多いため、「長男に家と土地を相続させたい」「事業を継ぐ子に設備を譲りたい」といった明確な意思を遺言書に残すことで、相続をスムーズに進められるケースがございます。地域特有の慣習として、家督を継ぐ長男・長女への配慮や、分家への配分など、地域の歴史や家の事情を踏まえた内容にすることが望ましい場合もございます。
私たち中本葬祭は新宮市で創業以来、地域の皆さまの葬儀をお手伝いしてまいりました。その中で、遺言書がきちんと準備されていたことでご遺族が安心して葬儀や相続に臨めたケースを数多く見てまいりました。一方で、「遺言書はあったが内容が曖昧で困った」「兄弟間で解釈が分かれてしまった」といったお声も伺います。
当地域で遺言書を作成される際は、ご自身の財産だけでなく、菩提寺との関係、地域での立場、ご家族の状況などを総合的に考慮し、可能であれば専門家のアドバイスを受けながら作成されることをお勧めいたします。また、遺言書を作成したことをご家族に伝えておく、あるいは信頼できる方に保管場所を知らせておくことで、いざという時にスムーズに手続きが進みます。
よくある質問
遺言書は何歳から作成できますか?
15歳以上であれば遺言をすることができます(民法第961条)。ただし、遺言能力(自分の行為の結果を理解できる意思能力)が必要です。ご年齢に関わらず、判断能力がしっかりしているうちに作成されることをお勧めいたします。
遺言書は一度書いたら変更できませんか?
遺言者はいつでも遺言の全部または一部を撤回できます(民法第1022条)。新しい遺言書を作成するか、遺言書を物理的に破棄することで撤回が可能です。ご状況の変化に応じて、何度でも書き直すことができます。
自筆証書遺言を法務局に預ける場合、本人が行く必要がありますか?
遺言者が自筆証書遺言(ホッチキス止めと封筒への封印はしない)を持参しなければなりません。代理人による申請はできませんので、ご本人が法務局に出向ける健康状態のうちに手続きを済ませる必要がございます。
公正証書遺言の証人は誰でもよいのですか?
証人には一定の資格要件があり、未成年者や推定相続人、受遺者などはなれません。ご友人や知人にお願いすることもできますが、内容を知られたくない場合は、専門家や公証役場で紹介してもらうことも可能です。その場合、1名につき1万円前後の日当が目安とされています。
遺言書に書いた内容は全て実現されますか?
遺言書は法定相続に優先されますが、遺留分(法定相続人に保障された最低限の相続分)を侵害する内容の場合、相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性がございます。円満な相続のためには、遺留分にも配慮した内容にすることが望ましいとされています。詳しくは弁護士や司法書士など専門家にご相談ください。
まとめ
遺言書には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があり、それぞれにメリット・デメリットがございます。費用を抑えたい場合は自筆証書遺言と法務局保管制度の組み合わせが、確実性を重視する場合は公正証書遺言がお勧めです。
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町といった熊野地域では、菩提寺との関係や家督の承継など、地域特有の事情を踏まえた遺言書作成が大切です。いずれの方法を選ばれる場合も、ご家族への想いを確実に届けるため、専門家のアドバイスを受けながら、ご自身の状況に合った形で準備されることをお勧めいたします。遺言書は、残されるご家族への最後の贈り物です。元気なうちに、余裕をもって準備しておくことで、ご自身もご家族も安心して過ごせるのではないでしょうか。
公的機関の確認先
制度、期限、必要書類は変更される場合があります。手続き前に、次の公的機関の最新情報をご確認ください。確認日 2026年7月22日。
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この記事の監修
中本 吉保(なかもと よしやす)/専務取締役・厚生労働省認定 1級葬祭ディレクター
平成12年(2000年)に中本葬祭を創業。以来25年以上・7,500件以上のご葬儀に携わり、「どうすれば故人様が喜んでくださるか」を考え続けています。
