「親族の葬儀で受付係を頼まれたけれど、どのような言葉遣いで参列者をお迎えすればよいのだろう」
「ご香典をお預かりするときに、どう声をかけたらよいか分からない」
突然受付をお願いされて、こうしたお悩みを抱えていらっしゃる方は少なくありません。受付係はご遺族に代わって参列者を最初にお迎えする大切な役割です。適切な言葉遣いと落ち着いた対応で、参列者に安心して式に臨んでいただくことが求められます。
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町で年間300件以上の葬儀を施行している中本葬祭では、受付係を務める方からのご相談も数多くお受けしてまいりました。本記事では、受付係が知っておきたい基本的な言葉遣いから、地域ならではの配慮まで、実例を交えて丁寧にご紹介します。
葬儀受付の役割と言葉遣いの基本
葬儀の受付係は、参列者が葬儀会場で最初に対面する窓口です。ご遺族に代わって感謝と敬意を表し、ご香典をお預かりし、芳名帳(ほうめいちょう:参列者の氏名や住所を記入する帳簿)への記帳をご案内する役割を担います。
受付での言葉遣いで最も大切なのは、「丁寧さ」と「簡潔さ」です。参列者は故人とのお別れのために訪れているため、長い挨拶や過度な会話は避け、心を込めた短い言葉で対応します。
基本的な挨拶例文
参列者がお見えになったら、まずは軽く一礼し、落ち着いた声のトーンでお礼を述べます。
- 「本日はお忙しいところお越しいただき、誠にありがとうございます」
- 「お足元の悪い中、お越しいただきありがとうございます」(雨天・荒天時)
- 「本日はご多用の中ご参列いただき、ありがとうございます」
これらの挨拶は、参列してくださったことへの感謝を伝える基本の型です。明るすぎる声や大きな声は控え、年配の方にも聞き取りやすい、落ち着いた声量でお伝えしましょう。
ご香典をお預かりする際の言葉
参列者からご香典を差し出されたら、両手で丁寧に受け取り、一礼してこのようにお伝えします。
- 「お預かりいたします」
- 「恐れ入ります。お預かりいたします」
- 「ありがとうございます。お預かりいたします」
ここで注意したいのは、「ありがとうございます」だけで終えないことです。ご香典は本来、故人にお供えするものをご遺族が預かる性質のため、「お預かりいたします」という表現がより適切で、葬儀の場に相応しい丁寧な印象を与えます。
芳名帳への記帳をご案内する際
ご香典をお預かりした後は、芳名帳への記入をお願いします。
- 「こちらにご記帳をお願いいたします」
- 「こちらへお名前とご住所をご記入ください」
芳名帳への記入は、後日ご遺族が香典返しをお送りする際の大切な情報源となります。記入漏れや読みにくい箇所がないか、さりげなく確認しましょう。
返礼品をお渡しする際
記帳が済んだら、会葬御礼や返礼品を両手で丁寧にお渡しします。
- 「こちらをお持ちください」
- 「こちら、供養のしるしでございます。お納めください」
返礼品をお渡しした後は、会場へのご案内を行います。
- 「こちらからどうぞ」(会場入口を手で示しながら)
- 「式場はあちらでございます」
受付で避けるべき言葉と注意したいマナー
葬儀の場では、不幸が重なることを連想させる「忌み言葉(いみことば)」や、直接的に死を表す表現を避けるのがマナーです。受付係は参列者と言葉を交わす機会が多いため、特に注意が必要です。
忌み言葉の例と言い換え
以下のような言葉は、葬儀の場にふさわしくないとされています。
| 避けるべき言葉 | 理由 | 言い換え例 |
|---|---|---|
| 重ね重ね、度々、再び、追って、続く | 不幸が重なることを連想 | 「改めて」「別の機会に」 |
| 四、九 | 「死」「苦」を連想 | 数字を使わない表現に |
| 死ぬ、死亡、生きる、生存 | 直接的すぎる表現 | 「ご逝去」「お亡くなりになる」 |
| 次々、いよいよ、くれぐれも | 繰り返しを意味する | 「どうぞ」「何卒」 |
ただし、忌み言葉を意識しすぎて言葉に詰まるよりも、心を込めて丁寧に対応することのほうが大切です。万が一使ってしまった場合でも、慌てず落ち着いて対応を続けましょう。
受付で避けたい行動
言葉遣いに加え、以下のような行動にも注意が必要です。
- 座ったまま挨拶をする:参列者が受付にお見えになったら、必ず立ち上がり姿勢を正して挨拶します
- ご香典の中身を参列者の前で確認する:金額の確認は、参列者がいない時間帯や別室で行います(ただし北海道などその場で開封し領収証を発行する地域もあります)
- 死因を詳しく尋ねる:参列者から質問されても「詳しくは存じ上げておりませんで…」と受け流します
- 私語や長話:知り合いの参列者が来ても、世間話や近況報告は控えます
- 携帯電話の操作:待機中であっても、受付でスマートフォンを触るのは不謹慎と捉えられます
困ったときの対応例
受付では予期せぬ状況に遭遇することもあります。そうした場合の対応例をご紹介します。
ご香典を辞退する場合:
「故人の遺志により、ご香典は辞退させていただいております。お気持ちだけありがたく頂戴いたします」
供花やお供え物を持参された場合:
「お志、ありがとうございます。担当者に確認してまいりますので、少々お待ちいただけますでしょうか」
(葬儀社スタッフや会計係に取り次ぎ、独断で判断しないこと)
弔電や供物が届いた場合:
差出人のお名前を確認し、速やかに葬儀社スタッフまたはご遺族にお渡しします。
葬儀受付の準備と当日の流れ
受付係を安心して務めるためには、事前の準備と当日の流れの把握が欠かせません。
事前準備(当日の1時間前までに到着)
受付係は葬儀開始の1時間前には会場に到着し、以下の準備を行います。
- 葬儀社スタッフやご遺族から、受付の流れや注意事項を確認
- 芳名帳、筆記用具(筆ペン、ボールペン、サインペンなど)、ご香典を入れるお盆が揃っているか確認
- 返礼品・会葬礼状の数と置き場所を確認
- 会場内の配置、トイレ、喫煙所、クローク、駐車場の場所を把握
- 葬儀の開式・閉式の時間を確認
- 自分がお焼香をするタイミングを確認(開式前に済ませる場合が多い)
開式の30分前には受付に立てる体制を整えておきましょう。
当日の流れ
- 開式前にお焼香を済ませる:受付が始まると席を離れられないため、事前にご遺族にひと言お断りしてお焼香を済ませます
- 参列者をお迎えする:一人ひとりに挨拶とお礼を述べ、ご香典をお預かりし、芳名帳への記帳を案内、返礼品をお渡しして会場へご案内
- ご香典を会計係に渡す:参列者がいないタイミングで、受け取ったご香典を会計係に引き継ぎます
- 受付を閉める:開式後も遅れて来られる方のために、しばらく受付に待機します
- 片付けと引き継ぎ:芳名帳、ご香典、返礼品の残数を整理し、葬儀社スタッフまたはご遺族に報告・引き継ぎます
服装と身だしなみ
受付係は参列者と同様、準喪服(じゅんもふく:略式の喪服)を着用します。
男性:光沢のないブラックスーツ、白のワイシャツ、黒のネクタイ、黒の靴下、黒の革靴。腕時計は外すのがマナーですが、受付では時間確認が必要なため装飾のないシンプルなものは許容されます。
女性:黒のワンピース、スーツ、またはアンサンブル。黒のストッキング(30〜50デニール程度)、黒のパンプス(ヒールは低めが望ましい)。アクセサリーは真珠などの落ち着いたもの。ネイルは透明またはオフにし、メイクは控えめに。長い髪は黒いゴムで一つ結びかお団子にまとめます。
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町での受付の特徴
新宮市をはじめとする熊野地域(新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町)は、古くから地域のつながりが深い土地柄です。県境をまたぎますが、いずれも熊野川流域に位置し、葬儀の慣習も共通しています。
ご香典辞退のケースが多い
当地域では近年、ご香典を辞退されるご家族が非常に増えており、むしろ辞退が一般的と言ってもよい状況です。受付係を依頼される際も、「ご香典は辞退いたします」と事前にお伝えいただくケースが多くあります。
ただし辞退の扱いはご遺族のご判断によりますので、受付を依頼された際は必ず「ご香典はお受けするか辞退するか」を確認しておきましょう。辞退する場合でも、当日ご香典をお持ちになった方のお気持ちを汲み、柔軟に対応されるご家族もいらっしゃいます。
地域コミュニティへの配慮
地域のつながりが深いため、家族葬であっても区長・組長など地域の代表者への早めのご連絡が望ましいとされています。受付係を務める場合、地区の方々が受付にお見えになることもあります。
地区によってはご近所がお手伝いに来てくださる文化が今も残っており、受付のサポートを申し出てくださることもあります。そうした場合は、ご遺族の意向を確認しながら、感謝の気持ちを伝えつつ協力して進めるとよいでしょう。
菩提寺との関係
当地域では菩提寺(ぼだいじ:先祖代々お世話になっているお寺)をお持ちのご家庭が多く、家族葬であっても菩提寺のご住職に読経をお願いするのが一般的です。受付でご住職をお迎えすることもありますので、事前にご遺族から「ご住職がお見えになる時間」を確認しておくと安心です。
火葬と告別式の順序
全国的には「告別式→ご出棺→火葬」の流れが一般的ですが、当地域には「告別式の日の朝に火葬場に向かい、ご収骨後に告別式を執り行う」古くからの風習があります。近年は全国的な流れも増えていますが、どちらの流れもご希望に応じて選べます。
受付係としては、参列者から「火葬はいつですか」と質問されることもあるため、当日の進行を事前に把握しておくと対応がスムーズです。
よくある質問
受付係を依頼されたら断ってもよいですか?
特別な事情がない限り、お引き受けするのがマナーとされています。ご遺族から信頼されてお願いされた役割ですので、「お手伝いできることがあれば、何なりとお申し付けください」と応じるのが一般的です。やむを得ず断る場合は、打診の段階で早めにお伝えしましょう。
受付は何日間務めるのですか?
お通夜と葬儀・告別式の2日間が基本です。ただし参列者の人数や式の規模によっては、お通夜のみの場合や、どちらか一方だけお願いされることもあります。依頼時に必ず日程を確認し、ご自身のスケジュール調整を行いましょう。
受付で「ありがとうございます」と言ってはいけませんか?
「ありがとうございます」自体は間違いではありませんが、ご香典は故人にお供えするものをご遺族が預かる性質上、「お預かりいたします」という表現のほうがより丁寧で、葬儀の場に相応しいとされています。両方を組み合わせて「ありがとうございます。お預かりいたします」と言うのもよいでしょう。
受付でお香典の金額を確認してもよいですか?
参列者がいる前でご香典袋を開封し、金額を確認するのは失礼にあたります。金額の確認や集計は、参列者の列が途切れた際や別の控室で行うのが基本です。ただし地域によっては(北海道など)その場で開封し領収証を発行する慣習もありますので、事前にご遺族や葬儀社に確認しておきましょう。
受付係へのお礼はどのように渡されますか?
地域や慣習により異なりますが、当日に「志」と書いた封筒でお礼を渡す場合、後日改めて食事や品物でお礼をする場合などがあります。受付係を務める側としては、お礼を期待せず、ご遺族をお支えする気持ちで臨むのが大切です。
まとめ
葬儀の受付係は、ご遺族に代わって参列者をお迎えする大切な役割です。言葉遣いで最も大切なのは、「丁寧さ」と「簡潔さ」。基本の挨拶は「お忙しいところお越しいただき、ありがとうございます」、ご香典をお預かりする際は「お預かりいたします」と伝えます。
忌み言葉や不適切な行動に注意しながら、落ち着いた声のトーンと丁寧な所作で、一人ひとりの参列者に心を込めて対応しましょう。事前に会場の配置や当日の流れを把握しておくことで、余裕を持って受付を務めることができます。
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町では、ご香典を辞退されるケースが多く、地域のつながりを大切にする土地柄です。ご遺族の意向を確認し、地域の慣習にも配慮しながら対応することで、温かく参列者をお迎えすることができます。
分からないことがあれば、無理に判断せず葬儀社のスタッフやご遺族に確認しましょう。あなたがご遺族のために尽力していることは、参列者の皆様もよく理解しています。落ち着いて、一つひとつの動作を丁寧に行うことが、何よりの供養と礼儀になります。
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中本葬祭は、新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町に6つの葬儀会場を備え、ご家族の状況に合わせた葬儀をご案内しています。お急ぎの場合は、24時間つながるフリーダイヤルへご連絡ください。
この記事の監修
中本 吉保(なかもと よしやす)/専務取締役・厚生労働省認定 1級葬祭ディレクター
中本葬祭(1968年創業)専務。和歌山県新宮市・那智勝浦町・太地町、三重県紀宝町を中心に、家族葬・一日葬・一般葬・火葬式など年間300件以上の葬儀に携わっています。
