葬儀が終わって少し落ち着いたころ、部屋に残った介護ベッドや車いすを見て、「これはいつまでに返せばいいのだろう」と気になる。私たちも、葬儀の後にご家族からこうしたご質問をいただきます。ただ、先に確かめたいのは期限ではありません。その品が誰の物か、です。
同じ部屋にあっても、介護保険で借りた物、ご本人が購入した物、施設や自治体から一時的に借りた物が混ざっていることがあります。回収日、利用料の扱い、付属品、破損したときの確かめ方は、貸与事業者や契約によって違います。自己判断で処分したり、屋外へ運び出したりするのは避けてください。
まず「借りた物」と「購入した物」を分けます
厚生労働省は、介護保険の福祉用具について、貸与の対象となる物と、入浴・排せつなどに用いる特定福祉用具の販売を分けて案内しています。住宅へ取り付けた手すりなどは、福祉用具貸与ではなく住宅改修として扱われることもあります。
つまり、介護に使った物がすべて回収されるとは限りません。動かす前に、次の物を手元へ集めておきます。
- 福祉用具の契約書、利用明細、納品書
- ケアプランやサービス利用票
- 本体や付属品に貼られた事業者名・管理番号の表示
- 通帳やカードの利用明細
- 担当ケアマネジャー、貸与事業者、施設の連絡先
本体の表示は写真に撮っておくと、電話で品名や管理番号を伝えるときに助かります。ただし、ご本人の氏名や住所が写った写真は、関係のない人へ送らないでください。
連絡はケアマネジャーと貸与事業者へ
介護保険の福祉用具貸与は、利用者の状態に合わせて事業者が用具を選び、取り付けや調整まで行うサービスです。厚生労働省も、利用にあたってはケアマネジャーや福祉用具貸与事業者へ相談するよう案内しています。
担当者が分かっているなら、次の順に連絡すると話が進めやすくなります。
- 担当ケアマネジャーへ、ご本人が亡くなったことと福祉用具が残っていることを伝える
- 貸与事業者へ、契約者名、品名、管理番号、設置場所を伝える
- 利用終了日と利用料の扱いを確認する
- 回収日時、立ち会う人、搬出経路を決める
- 返却する付属品と、返却対象でない物を書き分ける
担当が誰だったのか分からない。そんなときは、契約書や本体の表示を探してみてください。それでも見つからなければ、市区町村の介護保険担当窓口か地域包括支援センターに、どこへ確認すればよいかを尋ねます。
返却期限と利用料は契約ごとに確認します
亡くなった日、事業者へ連絡した日、回収に来てもらう日。この三つが同じ日になるとは限りません。利用終了日をどう扱うか、日割りがあるか、回収までの利用料、キャンセルの連絡方法は、契約書と事業者の説明で確かめます。
電話では次のことを尋ね、日付と担当者名を控えておきましょう。
- 利用終了日はいつになるか
- 回収までに利用料が発生するか
- 回収候補日はいつか
- 家族が外してよい部品はあるか
- 汚れや破損はどのように伝えるか
- 返却後に受領書や完了の記録が出るか
はっきりしない期限を、家族だけで決めてしまう必要はありません。葬儀、役所の手続き、住まいの明け渡しと予定が重なっているなら、その事情を伝えて回収日を相談すれば足ります。
ベッドは分解せず、車いすも外へ出しません
介護ベッドは重く、電動部分、サイドレール、マットレスなどが組み合わさっています。ご家族だけで分解しようとすると、けがをしたり、床や壁を傷つけたり、部品を取り違えたりしかねません。
厚生労働省の民間事業者向けガイドラインには、不要となった福祉用具に速やかに対応し、事業者が搬出した用具を点検・洗浄・消毒する流れが示されています。回収の方法は貸与事業者に任せ、家族は搬出に必要な通路を空けておくだけで十分です。
車いすや歩行器も同じです。先に玄関先や屋外へ出しておくと、雨に濡れたり、汚れたり、盗まれたりするおそれがあります。事業者から指示があるまでは、今の場所か、安全な室内に置いておきます。
付属品は本体ごとに小分けします
返すときに足りなくなりやすいのは、本体よりも付属品です。契約書や納品書と見比べながら、次の物を確かめます。
- 介護ベッドのリモコン、電源コード、サイドレール
- ベッド用マットレス、体位変換器、手すり
- 車いすのクッション、フットサポート、転倒防止部品
- 歩行器や杖に付属するかご、袋、交換部品
- 移乗用リフトのスリングや充電器
一式に見えても、持ち主が同じとは限りません。マットレスは貸与、シーツは家で買った物、クッションは別の契約、ということもあります。袋にまとめる前に契約ごとに分け、分からない物には「要確認」の付箋を貼っておくと、回収の日に慌てずに済みます。
汚れや破損を隠さず、そのまま伝えます
普通に使っていて付いた汚れなのか、修理が要る破損なのか。それを見極めるのは事業者です。強い洗剤で拭く、部品を接着する、別の部品に付け替えるといった手入れは、家族の判断でしないでください。
気になる箇所があれば、回収前に全体と該当部分の写真を撮り、いつ気付いたかを伝えます。費用を負担するかどうかは、契約と状態によって決まります。その場で見当をつけず、事業者の確認結果を待ちましょう。
購入品や住宅改修は別に考えます
購入したポータブルトイレや入浴補助用具、私物の杖などは、貸与事業者の回収対象に入らないことがあります。住宅改修で取り付けた手すりや段差解消の部材は、壁や床の一部になっている場合があります。
賃貸住宅なら、取り外しや原状回復を大家さんや管理会社に断りなく進めないでください。持ち家でも、外し方によっては壁や床が傷みます。遺品整理や片付けに手を付ける前に、貸与品、購入品、住宅設備の三つに分けておくことが大切です。
住まい全体を片付ける時期については、遺品整理の時期と目安でまとめています。賃貸住宅にお住まいだった場合は、契約者が亡くなった後の連絡と家財の扱いもあわせてご覧ください。
返却が終わるまで記録を残します
回収の当日はご家族が立ち会い、事業者と一緒に品数を確かめます。受領書や回収完了の連絡が届いたら保管し、最後の利用明細にも目を通しておきます。
連絡した日、回収日、担当者名、返した品名、手元に残った物。これを一枚のメモにしておけば、ほかのご家族や遺品整理を頼む人にも正確に引き継げます。死亡後の手続きを全体から確かめたい方は、死亡後の手続き一覧をご覧ください。
介護用品のほかにも、葬儀の後の整理で迷うことがあれば、中本葬祭へお問い合わせください。契約や費用のことは、貸与事業者や行政窓口など、どこへ確かめればよいかをお伝えします。ご自宅での介護が続いている時期の、葬儀の事前のご相談もお受けしています。
よくある質問
家族が亡くなった当日に介護ベッドを返す必要がありますか?
一律に当日返却とは決まっていません。利用終了日の扱い、利用料、回収日は契約によって異なります。まず担当ケアマネジャーと貸与事業者へ連絡し、契約書と事業者の説明で確認してください。
介護ベッドを家族で分解して玄関へ出してもよいですか?
事業者から指示がない限り、分解や屋外への移動は避けてください。重量物によるけが、住宅の損傷、部品の紛失を防ぐため、搬出方法は貸与事業者へ確認します。
事業者名が分からないときはどうしますか?
契約書、利用明細、本体の表示、ケアプランを確認します。見つからない場合は、担当していたケアマネジャー、市区町村の介護保険担当窓口、地域包括支援センターへ確認先を相談してください。
購入したポータブルトイレも回収してもらえますか?
購入品は貸与品と扱いが異なり、貸与事業者の回収対象でないことがあります。納品書や領収書を確認し、処分方法は自治体の分別ルールや販売事業者へ確認してください。
参考にした公的情報
公的情報は2026年9月1日に確認しました。個別の契約、利用料、回収方法は、契約書と貸与事業者の案内を優先してください。
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この記事の監修
中本 吉保(なかもと よしやす)/専務取締役・厚生労働省認定 1級葬祭ディレクター
平成12年(2000年)に中本葬祭を創業。以来25年以上・7,500件以上のご葬儀に携わり、「どうすれば故人様が喜んでくださるか」を考え続けています。
