親などが住んでいた家を相続するときは、不動産の名義や固定資産税だけでなく、火災保険の契約も確認が必要です。「保険料が口座から引き落とされているから、そのままで大丈夫」とは限りません。契約者、保険の対象となる所有者、建物の使い方が変わるためです。
一方で、相続人や家の今後が決まる前に解約すると、必要な補償が途切れるおそれがあります。最初に保険証券や更新案内を探し、契約内容を整理してから、相続人が保険会社または取扱代理店へ連絡します。この記事では、家を相続した家族が確認する順序を説明します。
結論|解約や口座停止を先にせず、契約内容を確認して連絡します
家の所有者や火災保険の契約者が亡くなったときは、次の順に進めます。
- 保険証券、契約継続証、満期・更新の案内を探す
- 契約者、被保険者、保険の対象、保険期間を確認する
- 建物と家財のどちらが補償対象かを分けて確認する
- 保険料の支払方法と次回支払日を確認する
- 家に住む、空き家で管理する、貸す、売るなど今後の予定を整理する
- 相続人から保険会社または取扱代理店へ連絡する
- 案内された名義変更、解約、契約見直しを行う
手続き方法や必要書類は、保険会社、商品、契約内容、相続関係によって異なります。全国共通の必要書類一覧を自己判断で揃えるのではなく、契約先の案内を先に確認してください。
東京海上日動と三井住友海上の公式FAQでは、火災保険の契約者が亡くなった場合、相続人への契約名義変更が必要と案内しています。両社とも、解約する場合も先に名義変更が必要としています。これは各社の対象商品に関する案内であり、別の保険会社や共済にも同じ手順をそのまま当てはめず、加入先へ確認することが大切です。
最初に探す書類と確認する場所
保険会社が分からないときは、次の書類や記録を探します。
- 火災保険証券、保険契約継続証
- 満期や更新に関する案内
- 保険料控除証明書
- 口座やクレジットカードの支払明細
- 住宅ローンの契約書類
- 不動産購入時や建築時の書類
- 保険代理店の名刺や連絡先
紙の証券を発行しない契約もあります。郵便物だけでなく、本人のメールに届いた更新通知や、保険会社の会員ページの存在も確認します。ただし、暗証番号を推測して無理にログインせず、相続人として確認する方法を保険会社へ尋ねてください。
保険料が引き落とされている金融機関だけでは、補償内容や契約上の名義を判断できません。支払明細から保険会社名が分かったら、契約番号を探し、公式窓口または取扱代理店へ連絡します。
「契約者」「被保険者」「保険の対象」を分けて見ます
火災保険の書類には、似ているようで役割の違う項目があります。
- 契約者:保険会社と契約を結び、保険料を支払う方
- 被保険者:補償を受ける利益を持つ方として契約に記載された方
- 保険の対象:建物、家財、または両方
- 保険期間:補償の開始日と終了日
- 所在地:補償対象となる建物や家財の場所
日本損害保険協会は、火災保険では建物と家財を分けて契約すると説明しています。家を相続したからといって、建物の契約だけを見れば十分とは限りません。亡くなった方の家財が補償されていたか、相続人が持ち込む家財はどう扱われるかも、契約先へ確認します。
マンションの場合は、専有部分と共用部分で契約が分かれていることがあります。賃貸住宅では、建物は貸主、家財は入居者が契約していることがあるため、持ち家と同じ手順で進めず、賃貸借契約と家財保険の両方を確認してください。
保険会社へ伝える前に整理したいこと
電話や窓口で、すべての相続手続きが終わっている必要はありません。分かる範囲で次の内容を整理します。
- 契約者が亡くなった日
- 契約番号
- 建物の所在地
- 連絡する方と亡くなった方との関係
- 建物を相続する方が決まっているか
- 現在その家に住んでいる方がいるか
- 今後、住む、貸す、売る、解体する予定があるか
- しばらく空き家になる可能性があるか
- 住宅ローンや質権設定の有無
相続人が複数いて、誰が家を引き継ぐか決まっていない場合は、その状況をそのまま伝えます。名義を推測して変更せず、暫定的に何をすべきかを確認してください。
損保ジャパンの公式案内では、契約者以外が変更を依頼すると戸籍謄本等の提出を求める場合があること、質権付き契約では質権者の同意が必要になる場合があることが示されています。必要書類を取得する前に、誰の、どの範囲の戸籍が必要かを契約先へ確認すると、取り直しを減らせます。
家の今後によって確認内容が変わります
相続人が住み続ける場合
契約者、被保険者、建物の所有者、住所、家財の所有者に変更がないかを伝えます。補償内容と保険金額が、現在の建物や家財に合っているかも確認してください。
名義変更だけで現在の補償がそのまま続くか、満期時の更新方法が変わるかは契約ごとに異なります。変更手続きが完了したら、変更確認書や会員ページで反映内容を確認します。
しばらく空き家として管理する場合
相続後すぐに住む人が決まらず、家が無人になることがあります。現在の契約が空き家となった後も同じ条件で継続できるかは、保険会社と商品によって異なります。
「誰も住まなくなっただけ」と考えず、建物の使用状況が変わることを契約先へ伝えてください。損保ジャパンの公式案内では、建物の構造・用途に変更がある場合は連絡が必要で、連絡しないと必要な保険金を支払えない場合があると説明しています。
空き家にできるかという保険上の判断と、郵便物の管理、通水、換気、庭木、近隣への連絡などの維持管理は別の問題です。家の今後が決まるまで、管理する方と点検頻度も家族で決めます。
売却・賃貸・解体を検討する場合
売却するからといって、引き渡し前にすぐ保険を解約してよいとは限りません。所有権の移転日、引き渡し日、家財の搬出日、解体日を整理し、補償をいつまで残すかを契約先へ確認します。
賃貸に変更する場合は、建物の用途、所有者、入居者の家財や賠償に関する契約が変わる可能性があります。現在の住宅用契約をそのまま使えると決めつけず、貸し始める前に相談してください。
解体する場合も、解体工事の開始前後で補償対象がどうなるかを確認します。工事中の事故は、既存の火災保険だけでは扱いが異なる場合があるため、解体業者の保険と契約先の両方へ確認します。
不動産の相続手続きと火災保険は別に進めます
火災保険の名義変更をしても、不動産の相続登記が終わるわけではありません。反対に、相続登記を済ませても、火災保険が自動的に新しい所有者名義へ変わるとは限りません。
家の相続では、次の項目を別々に管理します。
- 不動産の相続人と遺産分割
- 相続登記
- 固定資産税の納税通知や相続人代表者
- 火災保険・地震保険
- 電気、水道、ガスなどの契約
- 家財、重要書類、鍵の管理
- 売却、賃貸、使用、解体の方針
所有する不動産の全体が分からない場合は、所有不動産記録証明制度の確認方法をご覧ください。固定資産税の通知先と相続登記の違いは、固定資産税の相続人代表者届と相続登記で整理しています。
相続の期限や必要な確認先を一覧で見たい方は、相続手続きの流れと期限と死亡後の手続き一覧も参考にしてください。
相続放棄を検討している場合は、先に専門家へ確認します
相続放棄を検討している方は、保険の解約返戻金を受け取る、家財を処分する、家を貸す・売るなどの判断を先に進めず、家庭裁判所または弁護士・司法書士へ確認してください。個別の行為が相続の承認に当たるかは、財産の状況や行為の内容で判断が分かれます。
保険会社へ契約者が亡くなった事実を伝え、必要な保全方法を尋ねることと、契約上の権利を行使したり財産を処分したりすることは分けて考えます。「相続放棄する予定だから何も連絡しない」と決めず、保険会社と法律の専門家の双方へ状況を伝えてください。
よくある質問
保険料が引き落とされていれば補償は続きますか?
引き落としだけでは、契約者、被保険者、所有者、建物の用途が現在の状態に合っているか確認できません。契約者が亡くなったことと家の今後を、保険会社または取扱代理店へ伝えてください。
家を売る予定なら、すぐ解約してよいですか?
引き渡しまで建物を所有・管理する期間があります。補償をいつまで残すか、名義変更と解約をどの順で行うかを契約先へ確認し、補償の空白を作らないようにします。
火災保険と地震保険は一緒に確認しますか?
地震保険を火災保険へ付帯している場合があります。証券で付帯の有無、保険期間、名義を確認し、火災保険の変更と同時に必要な手続きを尋ねてください。
必要書類は戸籍謄本と死亡診断書ですか?
必要書類は保険会社、商品、相続関係、手続き内容で異なります。戸籍等を求める場合があるという公式案内はありますが、先に取得する範囲を決めず、契約先から必要書類の名称と有効期限を聞いてください。
まとめ
家を相続するときは、火災保険の保険証券や更新案内を探し、契約者、被保険者、建物と家財、保険期間、支払方法を確認します。解約や口座停止を先にせず、相続人から保険会社または取扱代理店へ連絡してください。
その家に住む、空き家で管理する、貸す、売る、解体するなど、今後の使い方によって確認事項が変わります。不動産の相続登記や固定資産税とは別の手続きとして管理し、相続放棄を検討している場合は財産を動かす前に専門家へ確認します。
中本葬祭では、葬儀後に必要な手続きを一度に代行できるとは限りませんが、何から確認するかを整理するお手伝いができます。保険の名義変更や補償内容は加入先へ、相続の個別判断は専門家へ確認してください。資料請求・お問い合わせからご相談いただけます。
出典
確認日:2026年8月28日
- 東京海上日動火災保険「火災保険の契約者が亡くなった場合の手続き」
- https://faq.tokiomarine-nichido.co.jp/faq/show/1933
- 三井住友海上火災保険「火災保険の契約者が亡くなった場合の手続」
- https://faq2.ms-ins.com/faq/show/1338
- 損害保険ジャパン「火災・地震の保険に関するその他の変更手続き」
- https://www.sompo-japan.co.jp/covenanter/change/habitation/step/
- 日本損害保険協会「火災保険」
- https://www.sonpo.or.jp/insurance/kasai/index.html
- 中本葬祭「相続手続きの流れと期限」
- https://nakamoto.jp/sougigo/souzoku-tetsuduki-nagare/
- 中本葬祭「死亡後の手続き一覧」
- https://nakamoto.jp/sougigo/shibougo-tetsuzuki-checklist/
この記事の監修
中本 吉保(なかもと よしやす)/専務取締役・厚生労働省認定 1級葬祭ディレクター
平成12年(2000年)に中本葬祭を創業。以来25年以上・7,500件以上のご葬儀に携わり、「どうすれば故人様が喜んでくださるか」を考え続けています。
