親が所有していた山林を相続し、「不動産の相続登記だけでよいのか」「山の場所や境界が分からない」と戸惑う方もいらっしゃいます。相続した土地が地域森林計画の対象森林であれば、面積にかかわらず、所有者となった日から90日以内に市町村長へ「森林の土地の所有者届出」を行います。
この届出は相続登記とは別の制度です。ただし、登記上の地目が山林だから必ず対象、山林でないから対象外と自己判断するのではなく、土地の所在する市町へ対象森林かを確認することが出発点です。この記事では、相続後に確認する順番と、新宮市、那智勝浦町、太地町、紀宝町の確認先を整理します。
結論|対象森林かを確認し、所有者となった日から90日以内に届け出ます
山林を相続したときは、次の順番で進めます。
- 固定資産税の通知書、登記事項証明書、権利証などから土地の所在と地番を確認する
- 土地の所在する市町へ、地域森林計画の対象森林かを確認する
- 対象なら、所有者となった日から90日以内に森林の土地の所有者届出を行う
- 相続登記、固定資産税、遺産分割など別の手続きも並行して確認する
林野庁は、売買、相続、贈与、法人の合併などにより地域森林計画の対象森林を新たに取得した方を届出の対象とし、取得した土地の面積に下限を設けていません。提出先は土地がある市町村です。
一方、地域森林計画の対象かどうかは手元の書類だけで判断しにくいことがあります。地番を準備して、土地の所在する市町の林務担当部署へ確認してください。
最初に、相続した土地の所在と地番を整理します
故人がどの不動産を所有していたか分からない場合は、固定資産税の納税通知書、名寄帳、登記事項証明書、権利証などを確認します。2026年2月2日からは、法務局で被相続人名義の不動産を一覧的に調べられる所有不動産記録証明制度も始まっています。詳しくは亡くなった方の不動産を調べる方法をご確認ください。
書類では、少なくとも次の項目を整理します。
- 土地がある市町村と大字・字
- 地番
- 登記上の地目と面積
- 名義人
- 共有者の有無
- 相続開始日と遺産分割の状況
登記上の地目が「山林」であっても、森林所有者届出の対象となる地域森林計画の範囲と完全に同じとは限りません。また、現況が林のように見える土地でも、対象外の場合があります。対象かどうかは、市町または都道府県の林務担当窓口で確認します。
森林の土地の所有者届出とは
森林の土地の所有者届出は、森林法に基づき、行政が森林所有者を把握し、森林整備や災害防止に必要な連絡を行えるようにする制度です。2012年4月以降、地域森林計画の対象となる民有林を新たに取得した方は、原則として届出が必要です。
相続の場合は、遺産分割協議がまとまってから初めて手続きするとは限りません。林野庁の案内では、相続開始から90日以内に遺産分割が終わっていない場合、法定相続人の共有物として届出を行い、その後、分割によって持分が変わった方は、分割の日から90日以内に改めて届け出る扱いが示されています。
相続開始から90日以内に遺産分割が完了し、最終的な所有者が確定した場合は、その所有者が期限内に届け出ます。家族内で「誰が相続する予定か」だけを決めた段階で止めず、期限と現在の権利関係を窓口へ伝えて確認してください。
2026年4月から届出様式が変わっています
林野庁は2026年4月1日から、森林の土地の所有者届出の様式を改正しています。新しい様式では、所有者の国籍等の記載欄などが追加されました。
古い様式を保存している場合や、インターネット上の記入例を使う場合は、提出先の市町が案内する最新様式かを確認してください。提出方法や添付書類の細かな扱いは市町で異なることがあるため、郵送やメール提出を希望する場合も事前確認が安心です。
届出で準備する主な書類
林野庁の案内では、主に次の書類を用意します。
- 森林の土地の所有者届出書
- 土地の位置を示す図面
- 登記事項証明書、遺産分割協議書など、権利を取得したことが分かる書類の写し
相続の状況によって、戸籍関係書類や相続関係説明図など追加資料の確認を求められることがあります。必要書類は個別事情で変わるため、提出前に地番、相続日、遺産分割の状況を窓口へ伝えてください。
地図は、対象地を特定できることが大切です。場所や境界が分からないときは、分からないまま図面を作らず、市町、法務局、土地家屋調査士などへ相談します。届出を出したことで境界が確定する制度ではありません。
相続登記や固定資産税の届出とは別です
森林の土地の所有者届出を提出しても、不動産の名義は変更されません。相続登記は法務局で行う別の手続きで、相続による取得を知った日から3年以内が原則です。不動産の相続登記に必要な書類と期限も合わせて確認してください。
また、固定資産税について、相続登記が終わるまでの納税通知書を受け取る代表者の届出が必要になる場合があります。これは納税連絡のための手続きであり、森林所有者届出や相続登記の代わりにはなりません。固定資産税の相続人代表者届と相続登記の違いで整理しています。
森林の届出、相続登記、固定資産税の代表者指定は、提出先も目的も異なります。一つを提出すればすべて終わると考えず、手続き一覧を作って進めましょう。相続手続きの流れと期限も全体確認に役立ちます。
新宮市・那智勝浦町・太地町・紀宝町の確認先
提出先は、相続人の住所ではなく、森林が所在する市町村です。複数の市町に土地がある場合は、それぞれの市町へ確認します。
新宮市
新宮市は「森林の土地を取得したときの届出」のページで制度を案内し、農林水産課を窓口としています。市のダウンロードページには届出書と記入例があります。提出前に最新様式と添付書類をご確認ください。
那智勝浦町
那智勝浦町は「森林の土地の所有者届出制度」のページで、地域森林計画の対象森林を取得した場合の届出を案内しています。相続登記とは別に届出が必要であることも明記されています。
太地町
太地町の担当課一覧では、産業建設課に農林業係があります。対象森林か、届出様式、提出方法、必要書類については、土地の地番を準備して同課へ確認してください。
紀宝町
紀宝町では、産業振興課が農林水産業に関する事務を担当しています。三重県側に相続した山林がある場合は、対象森林かと手続き方法を同課へ確認してください。
自治体の組織や様式は変わることがあります。この記事の確認日は2026年8月26日です。実際に提出するときは、各市町の最新案内を確認してください。
よくある質問
山林を少しだけ相続した場合も届出が必要ですか?
地域森林計画の対象森林であれば、取得面積にかかわらず届出の対象です。小さな土地だから不要と判断せず、地番をもとに市町へ対象かを確認してください。
相続登記をすれば森林所有者届出は不要ですか?
不要にはなりません。相続登記は法務局で不動産の名義を変更する手続き、森林所有者届出は市町村長へ森林の新しい所有者を知らせる手続きです。対象森林なら、それぞれ進めます。
遺産分割が90日以内に終わらない場合はどうしますか?
林野庁の案内では、法定相続人の共有物として期限内に届け出、その後、遺産分割によって持分が変わった方は、分割の日から90日以内に改めて届け出ます。個別の記載方法は提出先へ確認してください。
山林の場所や境界が分からなくても届出できますか?
まず固定資産税の資料や登記記録から所在と地番を調べ、対象森林かを市町へ確認します。位置図を用意できない、境界が分からない場合は、自己判断で線を引かず、市町や法務局、土地家屋調査士などへ相談してください。
まとめ
山林を相続したときは、土地の所在と地番を整理し、地域森林計画の対象森林かを市町へ確認します。対象であれば、面積にかかわらず、所有者となった日から90日以内に森林の土地の所有者届出を行います。
この届出は、相続登記や固定資産税の代表者届とは別です。遺産分割が終わっていなくても期限は進むため、早めに窓口へ現在の状況を伝えてください。中本葬祭では、葬儀後に必要となる手続きを整理するためのご案内も行っています。資料請求・お問い合わせからご相談いただけます。
出典
確認日:2026年8月26日
- 林野庁「森林の土地の所有者届出制度」
- https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/todokede/index.html
- 林野庁「森林を相続した場合の届出について」
- https://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/kouhousitu/jouhoushi/attach/pdf/2407-1.pdf
- 和歌山県「森林の土地の所有者届出制度について」
- https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070600/syoyusya_todokedeseido/index.html
- 新宮市「森林の土地を取得したときの届出」
- https://www.city.shingu.lg.jp/info/346
- 新宮市「申請書ダウンロード(農林水産課)」
- https://www.city.shingu.lg.jp/Info/967
- 那智勝浦町「森林の土地の所有者届出制度」
- https://www.town.nachikatsuura.wakayama.jp/info/340
- 太地町「太地町役場」
- https://www.town.taiji.wakayama.jp/tyousei/taiji-town/yakuba.html
- 紀宝町「紀宝町役場事務分掌規則」
- https://www.town.kiho.lg.jp/reiki_int/reiki_honbun/i668RG00000021.html
この記事の監修
中本 吉保(なかもと よしやす)/専務取締役・厚生労働省認定 1級葬祭ディレクター
平成12年(2000年)に中本葬祭を創業。以来25年以上・7,500件以上のご葬儀に携わり、「どうすれば故人様が喜んでくださるか」を考え続けています。
