ご家族が亡くなった後、入院費や通院費の領収書を整理していると、「高額療養費の申請は本人が亡くなった後でもできるのか」「どの健康保険へ連絡すればよいのか」と迷うことがあります。
高額療養費は、1か月に医療機関や薬局で支払った保険診療の自己負担が、年齢や所得に応じた限度額を超えた場合に、超えた分が支給される制度です。亡くなった方に未申請の給付がある場合、相続人が請求できることがあります。ただし、計算方法、案内の有無、必要書類、振込先の扱いは加入していた保険者によって異なります。
結論|保険者、診療月、支払額の3点を先に確認します
最初に確認するのは、亡くなった時点の保険者だけではありません。高額療養費は診療月ごとに扱われるため、その診療を受けた月に加入していた保険者を確かめます。
次の順で整理すると、問い合わせがしやすくなります。
- 資格確認書、資格情報のお知らせ、マイナポータルの資格情報などで保険者名を確認する
- 医療機関と薬局の領収書を診療月ごとに分ける
- すでに限度額が適用されていないか、支給申請や振込が済んでいないか確認する
- 保険者へ、本人が死亡したことと相続人が申請したいことを伝える
- 指定された申請書、戸籍、本人確認書類、振込先資料などを準備する
- 申請後の追加書類や振込予定を確認し、控えを保管する
保険者が計算する前に、領収書の金額だけで支給額を断定しないことが大切です。差額ベッド代、入院時の食事代、文書料、先進医療などの保険外負担は、原則として高額療養費の対象に含まれません。
本人が亡くなった後も相続人が申請できる場合があります
全国健康保険協会は、被保険者が亡くなり相続人が高額療養費を請求する場合、被保険者との続柄が分かる戸籍謄本などを添付書類として案内しています。つまり、本人が生前に申請していなくても、相続人から請求できる場合があります。
ただし、誰が申請人になるか、相続人が複数いる場合の同意や代表者の扱い、相続放棄がある場合、振込先に指定できる口座は保険者ごとに確認が必要です。故人名義の口座が凍結されていることもあるため、以前の申請書に故人の口座が記載されていた場合も、そのまま進めず保険者へ連絡してください。
戸籍関係書類の集め方は、故人の戸籍謄本の集め方でもご案内しています。
まず故人が加入していた保険者を特定します
問い合わせ先は、診療月の加入先によって変わります。
- 市町村国民健康保険は、当時住民登録があった市町村の国保窓口
- 後期高齢者医療制度は、都道府県の後期高齢者医療広域連合または市町村窓口
- 協会けんぽは、加入していた都道府県支部
- 健康保険組合、共済組合、国民健康保険組合は、それぞれの保険者
退職、転職、75歳到達、転居などで月の途中に保険が変わっている場合は、一つの窓口だけで判断できないことがあります。手元に複数の資格情報がある場合は、診療日と加入期間を照合してください。
亡くなった後の資格確認書などの返却は別の手続きです。健康保険証・資格確認書の返却期限も併せて確認できます。
相続人が準備するもの
必要書類は保険者と申請状況によって異なりますが、問い合わせ前に次の資料をまとめておくと確認が進みます。
- 高額療養費支給申請書など、保険者指定の書類
- 故人の保険者名、記号・番号が分かる資格情報
- 申請する相続人の本人確認書類
- 故人と申請人の続柄が分かる戸籍謄本など
- 医療機関、歯科、薬局の領収書や診療月が分かる資料
- 保険者が指定する振込先資料
- 低所得区分などの確認に必要と案内された課税・非課税証明書
- 保険者から届いた申請案内や支給決定通知
領収書がなくても保険者側で確認できる場合がある一方、市町村国保などでは領収書の写しを求める案内もあります。紛失したときは申請を諦めず、まず保険者へ相談してください。
マイナンバーを記載する申請では、本人確認や番号確認の追加書類が必要になることがあります。電子申請と紙申請で添付方法が異なる保険者もあるため、最新の申請案内を確認します。
申請済みか分からないときの確認方法
後期高齢者医療制度では、初めて高額療養費に該当したときに申請書を送り、以後は登録口座へ支給する運用を採っている地域があります。和歌山県後期高齢者医療広域連合は、初回該当時のみ、診療月のおよそ3か月後に申請書を送り、2回目以降は申請不要と案内しています。
一方、新宮市国民健康保険は、払い戻しの対象者へ申請書を郵送し、領収書の写しなどを添えて申請する案内です。通知が見当たらない場合でも、転居、郵便物の未整理、診療内容の審査中などが考えられるため、「通知がないから対象外」と決めつけず、診療月と氏名を伝えて確認します。
通帳には保険者名と異なる略称で振り込まれていることもあります。故人の口座履歴を確認できる立場にある場合は、支給決定通知と照合してください。
申請期限は保険者へ早めに確認します
協会けんぽでは、高額療養費を受ける権利は、診療月の翌月1日から2年で時効になると案内しています。国民健康保険や後期高齢者医療制度でも期限の定めがありますが、起算日や個別事情の扱いは加入先に確認してください。
病院の審査や支給案内を待っている間も、期限が近づくことがあります。古い領収書が見つかった場合は、まず診療月と保険者を特定し、申請できるかを早めに問い合わせます。
葬儀後のほかの手続きにも期限があります。死亡後の手続き一覧を使い、担当窓口、提出日、控えの場所を一緒に記録しておくと安心です。
2026年8月の制度変更は診療月で確認します
厚生労働省は、2026年8月診療分から月額の自己負担限度額を見直し、新たに8月から翌年7月までを単位とする年間上限を設けました。年齢、所得区分、外来か入院を含むか、多数回該当かなどによって計算が変わります。
亡くなった方の医療費を整理するときは、2026年7月以前の診療分と8月以降の診療分を分けてください。8月以降の領収書に新しい限度額を自己判断で当てはめるのではなく、故人の所得区分と加入履歴を把握する保険者に計算を確認します。
年間上限は、月ごとの支給とは別に確認が必要になることがあります。長期療養が続いていた場合や、同じ保険に加入する家族の医療費がある場合は、世帯合算、多数回該当、年間上限の対象になるかも併せて尋ねてください。
医療費控除や葬祭費とは別の制度です
高額療養費は健康保険から支給される給付で、所得税の医療費控除とは別の制度です。医療費控除を計算するときは、高額療養費などで補填される金額を対象医療費から差し引くため、支給額が未確定なら税務署や税理士へ扱いを確認します。
また、国民健康保険や後期高齢者医療制度の葬祭費、健康保険の埋葬料・埋葬費とも別です。高額療養費を申請したからといって、葬祭費などが自動的に申請されるわけではありません。制度ごとに申請人、必要書類、期限を確認してください。
新宮市周辺では加入先ごとに窓口が異なります
新宮市の国民健康保険に加入していた方は、新宮市の市民窓口課が確認先です。新宮市、那智勝浦町、太地町など和歌山県内で後期高齢者医療制度に加入していた方は、住んでいた市町村の担当窓口または和歌山県後期高齢者医療広域連合へ確認します。
紀宝町など三重県内の後期高齢者医療制度は、住んでいた市町の担当窓口または三重県後期高齢者医療広域連合が確認先です。会社の健康保険や共済組合に加入していた場合は、資格情報に記載された保険者へ問い合わせます。
窓口へ行く前に、故人の氏名、生年月日、診療月、保険者名、申請する方との続柄を整理し、予約の要否と持ち物を電話または公式ページで確認してください。
よくある質問
本人が亡くなった後でも高額療養費を申請できますか?
未申請の給付がある場合、相続人が申請できることがあります。協会けんぽでは、故人との続柄が分かる戸籍謄本などを添付する案内です。具体的な申請人と必要書類は故人の保険者へ確認してください。
領収書が見つからないと申請できませんか?
保険者によって必要書類が異なります。医療機関の審査情報で確認できる場合もあるため、紛失だけを理由に諦めず、診療月と医療機関名を整理して保険者へ相談してください。
2026年8月より前の診療分にも新しい上限が使われますか?
厚生労働省の案内では、見直しは2026年8月診療分からです。7月以前と8月以降を分け、該当月の制度で保険者に計算してもらいます。
葬祭費を申請すれば高額療養費も一緒に支給されますか?
別の制度です。申請書、申請人、必要書類が異なるため、それぞれ対象と手続きを確認してください。
まとめ
亡くなった方の診療月に高額な自己負担があった場合は、本人の死亡後でも相続人が高額療養費を申請できることがあります。まず診療月に加入していた保険者を特定し、領収書と申請案内を月ごとに整理してください。
必要書類や申請人の扱いは保険者によって異なります。故人との続柄が分かる戸籍、申請人の本人確認書類、振込先資料などを準備し、期限と未支給の有無を早めに確認します。2026年8月以降の診療分は制度が変更されているため、保険者による計算結果を確認してください。
中本葬祭では、葬儀後に必要な書類と手続きの整理についてもご案内しています。何から確認すればよいか迷う場合は、資料請求・お問い合わせからご相談ください。
出典
確認日:2026年8月24日
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
- 全国健康保険協会「健康保険高額療養費支給申請書」
- https://www.kyoukaikenpo.or.jp/application_form/benefit/006/
- 全国健康保険協会「高額療養費」
- https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/index.html
- 和歌山県後期高齢者医療広域連合「高額療養費」
- https://kouiki-wakayama.jp/healthcare-sys/payment/benefit
- 三重県後期高齢者医療広域連合「医療給付等」
- https://mie-kouiki.jp/kouki/iryoukyuuhu/
- 新宮市「国民健康保険のことは」
- https://www.city.shingu.lg.jp/info/646
この記事の監修
中本 吉保(なかもと よしやす)/専務取締役・厚生労働省認定 1級葬祭ディレクター
平成12年(2000年)に中本葬祭を創業。以来25年以上・7,500件以上のご葬儀に携わり、「どうすれば故人様が喜んでくださるか」を考え続けています。
