地震への備えを見直すとき、背の高い家具やテレビは確認しても、仏壇は「重いから動かないだろう」と後回しにしがちです。しかし、仏壇の周囲には、位牌、花立、香炉、遺影、照明、ガラス戸など、揺れで落ちたり動いたりする物があります。
対策は、仏壇へ金具を付けることから始めるのではありません。まず人が座る場所と避難経路を見て、次に仏壇本体、内部の仏具、火と電源を分けて点検します。仏壇の材質、壁の下地、宗派やご家庭のまつり方が分からない場合は、自己判断で穴を開けたり接着したりせず、仏壇店や住宅の管理者へ相談してください。
最初に見るのは「倒れる向き」と「逃げる道」です
東京消防庁は、家具類の転倒・落下・移動防止対策として、固定だけでなく、安全な配置、収納物の落下防止、ガラスの飛散防止をまとめて確認するよう案内しています。仏壇も室内に置かれた大きな物として、周囲を含めて考えます。
最初に、普段手を合わせる位置へ座り、次の点を見てください。
- 仏壇が前へ倒れたとき、人のいる場所へ届かないか
- 出入口、廊下、寝室からの動線をふさがないか
- 扉や引き出しが開いたとき、通路へ張り出さないか
- 上に載せた遺影や箱が落ちる位置に、人が座っていないか
- 窓ガラスや背の高い家具と同時に倒れる配置になっていないか
- ストーブや暖房器具の近くへ、物が落ちる可能性がないか
仏壇を移動できなくても、座る位置を変える、上に物を積まない、通路側の小物を減らすなど、先にできることがあります。方角や形式を大切にするご家庭もありますが、安全に手を合わせられることを優先し、迷う場合は菩提寺と仏壇店の両方へ確認します。
仏壇と神棚の置き場所を見直す方は、神棚と仏壇の置き場所|方角より大切な確認点も参考にしてください。
本体の固定は、仏壇と壁の両方を確認して決めます
固定器具は、付ければ必ず安全になるわけではありません。仏壇の構造に合わない場所へビスを入れると、木部、扉、背板、塗装を傷めることがあります。壁側も、石こうボードの表面だけでは十分な強度を得られない場合があります。
固定を考えるときは、次の情報をそろえます。
- 仏壇のメーカー、購入店、型や大きさ
- 上置き型、台付き型、造り付けなどの形
- 仏壇本体と台が分かれているか
- 背面と壁の間隔
- 壁の材質と下地の位置
- 賃貸住宅か持ち家か
- すでに使っている固定具と劣化の有無
内閣府の家具固定の案内には、ベルト式の器具を仏壇へ使う例があります。ただし、同じ方式がすべての仏壇へ適合するとは限りません。現在の仏壇と壁に合う器具、取り付け位置、施工方法は、仏壇店、施工業者、住宅の管理者へ現物を見せて確認してください。
大型の仏壇を家族だけで前へ引き出したり、持ち上げたりしないでください。重量があるほか、扉や内部の仏具が動き、床を傷めることもあります。確認のために動かす必要がある場合は、仏具を安全に移す順番も含め、専門店へ相談します。
仏具と遺影は「落ちる・滑る・割れる」で点検します
本体が倒れなくても、内部や周囲の物が飛び出すことがあります。仏具は一つずつ、落下、滑り、破損の三つに分けて見ます。
- 高い場所に重い物を載せていないか
- 扉や引き出しが揺れで開きやすくないか
- 花立や香炉が棚の端へ寄っていないか
- 遺影や額が壁へ立て掛けただけになっていないか
- ガラス戸や額のガラスが割れたとき、座る場所へ飛ばないか
- コードが引っ張られ、照明や器具が落ちる位置になっていないか
位牌やご本尊、宗教具の置き方は宗派や寺院、ご家庭によって異なります。固定や滑り止めを施すことで材質を傷めたり、日常のお参りや掃除がしにくくなったりすることもあります。粘着材を直接付ける前に、仏壇店と菩提寺へ相談してください。
配置を記録するときは、正面と左右から写真を撮り、撮影日も残します。揺れの後に戻すためだけでなく、固定方法を専門店へ相談するときにも役立ちます。掃除を兼ねて点検する場合は、仏壇の掃除方法|金箔や仏具を傷めない手順と注意点をご確認ください。
火と電源は、揺れた後に戻らない前提で備えます
ろうそくや線香に火が付いているときに揺れを感じても、無理に仏壇へ近づかないでください。まず身の安全を確保し、強い揺れの最中は低い姿勢で頭を守ります。避難が必要なときは、火を消すために危険な室内へ戻らないことが大切です。
平常時には、次の点を確認します。
- 火を使うときは、その場を離れない
- 燃えやすい紙、布、造花を火の近くへ置かない
- ろうそく立てと香炉が安定しているかを見る
- 照明や電気ろうそくのコード、プラグ、発熱を点検する
- 使わない電気器具は、製品の説明に従って電源を切る
- 家族で避難するときの声掛けと集合場所を決める
宗教・宗派やご家庭の習慣があっても、火を絶やさないために無人の部屋で燃やし続けることは避けます。線香やろうそくの扱いは、なぜお葬式ではろうそくや線香を絶やしてはいけないの?でも安全を優先する考え方を案内しています。
賃貸住宅や固定できない仏壇は、先に相談先を分けます
賃貸住宅では、壁へ穴を開ける前に賃貸借契約と管理会社の案内を確認します。退去時の原状回復だけでなく、壁の構造や配線の位置が分からないまま施工すると危険です。
相談先は、内容によって分けると進めやすくなります。
- 仏壇の構造、材質、動かし方:購入店または仏壇店
- 壁の下地、固定施工、住宅設備:施工業者または住宅管理者
- 宗教具の位置、ご本尊や位牌の扱い:菩提寺または宗教者
- 賃貸住宅の工事可否:管理会社または家主
- 自分で作業できない場合:対応範囲を明示する専門業者
「穴を開けられないから何もできない」と決めず、倒れる向きの変更、上に載せた物を下ろす、通路を空ける、扉やガラスから座る位置を離すといった対策から始めてください。器具だけを購入する前に、取り付ける場所の強度と、仏壇への適合を確認します。
家族で10分点検し、写真と日付を残します
一度の大がかりな作業より、定期的な点検が大切です。防災の日、仏壇の掃除、法要前など、家族が集まる機会に次の順で確認します。
- 出入口まで歩き、物がないか見る
- 仏壇のぐらつき、傾き、壁との隙間を見る
- 上に載せた物と高い位置の仏具を確認する
- 扉、引き出し、ガラス、額の状態を見る
- 火を使う場所と電源コードを確認する
- 正面と左右から写真を撮る
- 点検日と、相談が必要な箇所を記録する
地震の後は、扉や引き出しを正面から急に開けないでください。中で物が倒れている可能性があります。仏壇が傾いている、固定具が外れている、ガラスが割れている、電気配線が傷んでいる場合は近づかず、安全な場所から専門業者へ相談します。
よくある質問
仏壇は重いので、固定しなくても動きませんか?
重量だけで安全とは判断できません。揺れ方、仏壇の形、台との接合、床、壁、重心によって、転倒や移動の可能性があります。本体に加え、扉、引き出し、仏具、遺影、ガラス、周囲の通路も確認してください。
市販の転倒防止器具を自分で付けてもよいですか?
仏壇の材質と構造、壁の下地、器具の使用条件が確認できる場合に限ります。分からないまま穴を開けたり接着したりせず、仏壇店、施工業者、住宅管理者へ現物や写真を見せて相談してください。
位牌や仏具へ滑り止めを付けてもよいですか?
材質を傷めたり、宗派や寺院の考え方と合わなかったりする場合があります。直接貼り付ける前に、仏壇店と菩提寺へ確認してください。まず高い場所へ重い物を置かない、棚の端から離す方法を検討します。
地震で仏壇が傾きました。自分で戻してよいですか?
大型の仏壇や、ガラス・電気配線・固定具に異常がある仏壇へ近づくのは危険です。周囲へ人が入らないようにし、安全な場所から仏壇店や施工業者へ相談してください。
まとめ
仏壇の地震対策は、固定器具だけで考えず、倒れる向き、座る位置、避難経路、仏具や遺影の落下、ガラス、火、電源を分けて点検します。大型の仏壇を無理に動かしたり、材質や壁の強度を確認せず加工したりしないでください。
宗教具の位置は菩提寺、仏壇の構造は仏壇店、壁や施工は住宅の管理者・施工業者へ相談先を分けます。葬儀後の仏壇や供養について整理したい方は、資料請求・お問い合わせから中本葬祭へご相談ください。お急ぎの場合は24時間対応しています。
出典
確認日:2026年9月1日
- 東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」
- https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/learning/elib/kagutenhandbook.html
- 内閣府「やってみよう!家具固定 第3回〜地震防災対策『家具転倒防止金具や種類』」
- https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h22/07/kagukotei.html
- 内閣府「自然災害への備えは万全ですか?チェックしてみよう!」
- https://www.bousai.go.jp/kyoiku/hokenkyousai/check.html
- 中本葬祭「神棚と仏壇の置き場所|方角より大切な確認点」
- https://nakamoto.jp/kuyo/kamidana-butsudan-basho-narabi/
この記事の監修
中本 吉保(なかもと よしやす)/専務取締役・厚生労働省認定 1級葬祭ディレクター
平成12年(2000年)に中本葬祭を創業。以来25年以上・7,500件以上のご葬儀に携わり、「どうすれば故人様が喜んでくださるか」を考え続けています。
