お稲荷さんのお供えといえば、油揚げやいなり寿司を思い浮かべる方が多いでしょう。ただし、「稲荷の神様が油揚げを好物としている」という単純な話ではありません。稲荷信仰と狐の結び付き、狐の好物とされた食べ物、油揚げを供える習慣が重なって広まったと考えられています。
狐は稲荷大神そのものではない
伏見稲荷大社は、狐を稲荷大神の神使・眷属と説明しています。狐は稲荷大神そのものではなく、神様のお使いです。
神社本庁も、稲荷神社の狐を、お祀りされている神様の神使として紹介しています。稲荷社の前に狐の像が置かれているため混同されやすいのですが、神様と狐は区別して考えます。
油揚げを供える理由には複数の説がある
油揚げを供える由来について、全国共通の一つの確定した説明があるわけではありません。
国立国会図書館のレファレンス協同データベースでは、昔話や狂言の中で狐の好物とされたものに、油で揚げたネズミがあることを紹介しています。その後、豆腐を揚げた現在の油揚げが狐の好物とみなされ、稲荷信仰のお供えとして定着したという説明があります。
一方、稲荷大神が穀物や食物に関わる神様であることから、大豆と油を使った油揚げが供えられるようになったとする説明もあります。いずれも伝承や習俗をたどる説であり、どれか一つを唯一の起源とは断定できません。
いなり寿司との関係
国立国会図書館の電子展示では、酢飯を油揚げに詰めた寿司を「稲荷寿司」と呼ぶのは、狐が油揚げを好むとされたことに由来すると説明しています。
俵のような形を五穀豊穣と結び付ける説明もありますが、形や呼び名は地域や店によって異なります。
神社の稲荷と寺院の稲荷
「稲荷」と呼ばれる信仰には、神社で稲荷大神をお祀りする場合と、寺院で荼枳尼天をお祀りする場合があります。
伏見稲荷大社は神社で、稲荷大神をお祀りしています。豊川稲荷は正式には妙嚴寺という曹洞宗の寺院で、豐川吒枳尼眞天をお祀りしています。豊川稲荷の公式案内によると、稲穂を担い白狐にまたがるお姿から、豊川稲荷の通称が広まりました。
神道と仏教では信仰の背景や作法が異なります。詳しくは神道の葬儀の流れと作法もご覧ください。
お供えするときの注意
油揚げやいなり寿司を供えてよいか、包装を外すか、持ち帰るかは、神社や寺院によって異なります。野生動物や鳥による食害、衛生上の理由から、食べ物を置いたままにしないよう案内している場所もあります。
- 参拝先の掲示や案内を確認する
- 供えてよい場所と時間を守る
- 持ち帰りの指定がある場合は従う
- 家庭のお稲荷さんでは、家や地域の慣習も確認する
まとめ
お稲荷さんに油揚げを供える習慣は、稲荷大神の神使である狐と、狐が油揚げを好むという伝承が結び付いて広まったものです。ただし、その起源には複数の説があります。狐を神様そのものとせず、神社の稲荷大神と寺院の荼枳尼天の違いも理解したうえで、参拝先の案内に沿ってお供えしましょう。
参考資料
この記事の監修
中本 吉保(なかもと よしやす)/専務取締役・厚生労働省認定 1級葬祭ディレクター
平成12年(2000年)に中本葬祭を創業。以来25年以上・7,500件以上のご葬儀に携わり、「どうすれば故人様が喜んでくださるか」を考え続けています。
