突然のご不幸で葬儀のご準備を進める中、ご遺族から「弔辞をお願いしたい」とお声がけいただき、戸惑われる方は少なくありません。「何を書けばよいのか」「どんなマナーがあるのか」と不安を抱えながらも、故人様への最後のお別れの言葉を大切に届けたいと願われることでしょう。
弔辞(ちょうじ)とは、葬儀や告別式で故人様に向けて読み上げる追悼の言葉です。普段は経験することの少ない大役ですが、基本的な構成とマナーを知っておけば、自分らしい言葉で故人様を送ることができます。この記事では、新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町で葬儀をお手伝いしてきた私たち中本葬祭が、弔辞の書き方から当日の読み方まで、丁寧に解説いたします。
弔辞とは|故人様へ贈る最後のお別れの言葉
弔辞とは、葬儀・告別式において故人様に向けて読み上げる追悼の言葉のことです。「お別れの言葉」や「哀悼の辞」とも呼ばれ、故人様と特に親しかった方が代表して、ご霊前で最後の思いを語ります。
弔辞を依頼されるのは、故人様と深い関わりのあった方です。親しい友人や知人、お世話になった恩師や上司、苦楽を共にした同僚や部下などが一般的です。葬儀の規模にもよりますが、通常は1名から3名程度、多くても5名程度が弔辞を読みます。
弔辞を依頼された場合、特別な事情がない限りお引き受けするのがマナーとされています。人前で話すことが苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが、故人様やご遺族のお気持ちを汲んで、できる範囲で誠意を持って務める姿勢が大切です。ただし、ご病気やご体調、精神面で負担が大きい場合には辞退することも可能です。その際は、できるだけ早くご遺族に辞退の意思をお伝えし、葬儀準備に支障が出ないよう配慮しましょう。
弔辞には厳密な定型文はありませんが、基本的な構成があります。一般的には、故人様への呼びかけや訃報を受けた際の驚きから始まり、故人様との思い出やエピソード、お別れの言葉、そしてご冥福を祈る言葉で締めくくります。文章の長さは、ゆっくり読んで3分から5分程度が適切です。文字数にすると800字から1,200字程度、400字詰めの原稿用紙で2枚から3枚ほどが目安となります。
弔辞は通夜ではなく、葬儀・告別式で読まれるのが一般的です。これは、通夜が本来「内々で故人様と夜通し過ごす場」という位置づけであったためです。当地域でも、告別式の中で弔辞の時間を設けることが通例となっています。
弔辞の書き方と構成|心に残る言葉を届けるために
弔辞を書く際には、いくつかの基本的なマナーと構成を押さえておくことで、故人様への敬意を表しながら、自分らしい言葉を届けることができます。
弔辞の基本構成
弔辞は一般的に以下の構成で作成します。まず、冒頭で故人様への呼びかけや訃報を知った際の驚き・悲しみを述べます。「◯◯さん」と親しみを込めて呼びかけたり、「突然の訃報に接し、言葉を失いました」といった現在の心境を伝えます。
次に、ご自身と故人様との関係性を簡潔に説明します。「私は学生時代からの友人として」「会社で20年間ご一緒した同僚として」など、どのような立場で弔辞を述べているのかを明確にします。
そして、弔辞の中心となるのが故人様とのエピソードです。具体的な思い出や印象に残っている出来事、故人様の人柄を表すエピソードを語ります。これが弔辞の最も大切な部分で、参列者やご遺族が故人様を偲ぶ貴重な時間となります。
最後に、お別れの言葉と結びを述べます。故人様への感謝を伝え、「どうか安らかにお眠りください」といった冥福を祈る言葉で締めくくります。文末には、葬儀当日の日付と肩書き(友人代表、会社名など)、ご自身のお名前を記します。
避けるべき言葉|忌み言葉と重ね言葉
弔辞を書く際には、縁起の悪い「忌み言葉」と「重ね言葉」を避けることがマナーです。重ね言葉とは「たびたび」「ますます」「重ね重ね」「再三」など、不幸が繰り返されることを連想させる言葉です。また、「死ぬ」「苦しむ」「切る」といった直接的な表現や、数字の「四」「九」も避けるべきとされています。
これらの言葉は、別の表現に言い換えましょう。「死ぬ」は「お亡くなりになる」「ご逝去」「他界される」に、「生きているとき」は「ご生前」「お元気なころ」に言い換えます。丁寧で柔らかい表現を選ぶことで、ご遺族への配慮も示すことができます。
宗派への配慮
弔辞では宗教・宗派への配慮も重要です。たとえば「ご冥福をお祈りします」という表現は仏教でも浄土真宗では用いられないことがあります。宗派が分からない場合や迷われた場合は、「謹んで哀悼の意を表します」「心よりお悔やみ申し上げます」といった、どの宗派でも使いやすい表現を選ぶと安心です。
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町では、菩提寺(先祖代々お世話になっているお寺)をお持ちのご家庭が多く、宗派が明確な場合がほとんどです。弔辞を依頼される際には、ご遺族や葬儀社に宗派を確認しておくと、より適切な言葉を選ぶことができます。
奉書紙と用紙の選び方|正式な形式と略式
弔辞は、用紙の選び方や書き方にも作法があります。正式には奉書紙(ほうしょし・ほうしょがみ)または巻紙に、薄墨の毛筆で縦書きするのがマナーとされています。
奉書紙とは、室町時代から幕府の公文書に使われてきた和紙の一種で、厚手でしっかりとした質感が特徴です。「大切なことを伝える紙」として、古くから弔辞や香典、お布施を包む際に用いられてきました。奉書紙は表面がつるつるしており、裏面はざらざらしています。文字を書く際には、必ず表面(つるつるした面)に書きましょう。裏面に書くと墨がにじみやすくなります。
奉書紙は、デパートの文具専門店、書道用品店、和紙専門店、または通信販売などで購入できます。一般的にはA4サイズ100枚入りで1,000円から3,000円程度が相場です。弔辞専用の用紙セット(折り畳み用の巻紙と「弔辞」と書かれた包み紙がセット)も販売されています。
弔辞を書く際には、右上から10センチほどの余白を取り、まず「弔辞」という表題を書きます。その後、1行分のスペースを空けてから本文を書き始めます。書き始めや改行の際も1字下げず、句読点は打ちません。代わりに1文字分空けることで、文の区切りを示します。文章を書き終えたら十分な余白を取り、葬儀当日の日付、肩書き、お名前をそれぞれ1行ずつ低い位置に記します。
薄墨を使うのは、悲しみで涙により墨も薄まるという意味が込められています。毛筆が扱えない場合は、薄墨の筆ペンでも代用できます。
ただし、近年では便箋に万年筆やサインペン、ボールペンで書き、白い一重の封筒に入れる略式も増えています。家族葬や友人・知人中心の葬儀など、形式があまり重視されない場合には略式でも問題ありません。封筒は二重のものは「不幸が重なる」という意味で避け、白い一重の封筒を選び、表面に「弔辞」と記載します。
社葬など形式やマナーが重視される葬儀では、正式な奉書紙を使用することをお勧めします。弔辞はご遺族の手元に永く保管されるものですので、形式に迷われた際には葬儀社にご相談されると安心です。
弔辞の包み方と当日の読み方|作法とマナー
弔辞を書き終えたら、奉書紙で包んで持参するのがマナーです。弔辞をそのまま裸で持ち歩くのは失礼にあたります。
弔辞の折り方と包み方
大判の奉書紙に書いた場合は、まず左右を合わせて半分に折り、次に同じ方向へ3つ折りにし、最後に上下を合わせるように2つに折ります。巻紙の場合は、文章の最後から頭の方向に向けて蛇腹に折るか、内側に巻いて整えます。
折りたたんだ弔辞は、同じ奉書紙で包みます。包み紙の中央よりやや右側に弔辞を置き、右側、左側の順に折って、必ず左側が前に来るようにします。ひっくり返して上下を中央に向けて折れば完成です。表面中央に「弔辞」と毛筆で記載します。
当日の読み方と流れ
葬儀当日、司会者に名前を呼ばれたら起立して祭壇前へ進みます。まず僧侶とご遺族、参列者に一礼し、最後にご遺影に向かって一礼します。弔辞を包みから取り出し、ご位牌・ご遺影に向かって読み上げます。弔辞は両手で胸の高さに持ち、故人様に語りかけるように、ゆっくりと丁寧に読むことを心がけましょう。
緊張すると早口になりがちですが、参列者が聞き取りやすいよう、落ち着いたトーンとスピードを意識します。あまり感情を込めすぎるのも禁物ですが、心を込めて言葉をかみしめるように読むことが大切です。
弔辞を読み終えたら、原稿を包み紙に戻し、弔辞台や焼香台に供えます。セレモニースタッフがその場で預かる場合もあります。供える際は、包みの表書き(「弔辞」の文字)が祭壇の方に向くようにします。最後にご位牌・ご遺影、僧侶とご遺族、参列者に対して再度一礼してから自席に戻ります。
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町での弔辞
新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町は、いずれも熊野地域に属し、葬儀の慣習も共通しています。地域のつながりが深い土地柄のため、弔辞を含めた葬儀全体が、故人様を地域で見送るという意味合いを持つことが多くあります。
当地域では菩提寺をお持ちのご家庭が多く、宗派が明確です。弔辞を述べる際には、事前にご遺族や葬儀社を通じて宗派を確認し、その教えに配慮した言葉選びをされると、より丁寧な弔辞となります。たとえば浄土真宗では「冥福」という言葉を用いないなど、宗派により言葉の使い方が異なる場合があります。
また、当地方には「告別式の日の朝に火葬場に向かい、ご収骨後に告別式を執り行う」という古くからの風習があります。この場合、弔辞は火葬後の告別式で読まれることになります。近年は全国的な流れ(告別式→ご出棺→火葬)も増えていますが、どちらの流れでも弔辞を読むタイミングはご遺族や葬儀社と事前に確認しておくと安心です。
私たち中本葬祭では、新宮市を中心に年間300件以上の葬儀をお手伝いしており、弔辞の準備や当日の流れについても丁寧にご案内しております。弔辞を依頼された方からのご相談も承っておりますので、どうぞお気軽にお声がけください。
よくある質問
弔辞は何分くらいの長さが適切ですか?
ゆっくり読んで3分から5分程度が適切です。文字数では800字から1,200字程度、400字詰めの原稿用紙で2枚から3枚ほどが目安となります。長すぎると他の弔辞を読む方やご遺族に負担となりますので、簡潔にまとめることを心がけましょう。
弔辞を便箋に書いても失礼ではありませんか?
社葬など形式が重視される葬儀では奉書紙が望ましいですが、家族葬や親しい方中心の葬儀では便箋でも問題ありません。白い一重の封筒に入れ、表面に「弔辞」と記載します。迷われた場合は、ご遺族や葬儀社にご相談ください。
弔辞で使ってはいけない言葉はありますか?
「たびたび」「ますます」「重ね重ね」などの重ね言葉や、「死ぬ」「苦しむ」「切る」といった直接的な表現、数字の「四」「九」は避けましょう。「死ぬ」は「ご逝去」「お亡くなりになる」に、「生きているとき」は「ご生前」に言い換えます。
宗派が分からない場合、どのような言葉で締めくくればよいですか?
「ご冥福をお祈りします」は宗派によっては適さないことがあります。宗派が分からない場合は、「謹んで哀悼の意を表します」「心よりお悔やみ申し上げます」「安らかにお眠りください」など、どの宗派でも使いやすい表現が無難です。
弔辞を読む際、緊張してしまいそうです。練習は必要ですか?
事前に声に出して練習されることをお勧めします。実際に読んでみることで、読みにくい箇所や時間配分が分かります。また、当日は原稿を手元に持って読めますので、ご安心ください。大切なのは故人様への誠意ですので、多少言葉に詰まっても問題ありません。
まとめ
弔辞は、故人様へ贈る最後のお別れの言葉であり、ご遺族や参列者にとっても故人様を偲ぶ貴重な時間となります。基本的な構成は、呼びかけ、故人様との関係性、具体的なエピソード、お別れの言葉で成り立ち、ゆっくり読んで3分から5分程度にまとめるのが適切です。
正式には奉書紙または巻紙に薄墨の毛筆で縦書きし、包んで持参するのがマナーですが、近年は便箋に書いて白い封筒に入れる略式も一般的になっています。葬儀の形式やご遺族のご意向に応じて選ばれると良いでしょう。
重ね言葉や忌み言葉を避け、宗派にも配慮した言葉選びを心がけることで、故人様やご遺族への敬意を示すことができます。新宮市・那智勝浦町・太地町・三重県紀宝町では菩提寺をお持ちのご家庭が多いため、宗派を事前に確認しておくと安心です。
弔辞に完璧な形はありません。最も大切なのは、故人様への感謝と別れを自分らしい言葉で伝えることです。形式にとらわれすぎず、心を込めて準備されることをお勧めします。
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この記事の監修
中本 吉保(なかもと よしやす)/専務取締役・厚生労働省認定 1級葬祭ディレクター
平成12年(2000年)に中本葬祭を創業。以来25年以上・7,500件以上のご葬儀に携わり、「どうすれば故人様が喜んでくださるか」を考え続けています。
